歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

本「凡人のための地域再生入門」感想

地域活性化の、そしてビジネスの、”リアル”がわかる本。

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

 

 

正論を吐く”地域再生事業家”

衰退が叫ばれて久しい日本の地方。その活性化のため"地域再生事業家"として活動されている木下斉(ひとし)さんという方がいます。

自分は地方(京都府舞鶴市)の出身で、ふるさとの商店街がどんどんシャッター街になっているのを、帰省するたびに目にします。そうやって徐々に淋しくなってゆくふるさとのために、自分が培ったスキルを何か活かせないだろうか、と常々思っているので、木下さんの活動や発言にはずっと注目していました。

で、一度、木下さんが登壇されるトークイベントに参加したことがあります。そのことは以前、記事にも書きました。

www.rekishitantei.com

 

普段からツイッターなどで、言いたい放題言われている木下さんですが(ただ、その内容は正論ばかりです)、このイベントでも舌鋒鋭く、日本の地方の現状切ってらっしゃいました。

その木下さんが昨秋(2018年11月)、出版されたのが「地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」。

読んでみると、各地のリアルをつぶさに見てきた木下さんが書いてるだけに、地に足の着いた正論がどこまでも展開されていて、非常に面白かったです。

と、同時に地方活性化に関心のない一般人でも、何か夢を持って事業を起こそうと思っている人間には、プラクティカルに役に立つ本でした。

どういう点で有益だったのか。レビューしてみたいと思います。

 

ストーリーと事例集の”良いとこ取り”

本は”小説”というスタイルを取っています。それも一種の成長小説(ビルドゥングスロマン)。

主人公は、作者の言葉を借りると…

都市部で会社に言われたことをやるだけの弱気なサラリーマン

です。主人公をあえて、ふつうのこれといって、取り柄のない人に設定しているのは、地域活性化にヒーローは必要ない、という作者からのメッセージ。題名にわざわざ”凡人”の一語を入れていることも、同じ趣旨ですね。「自分はスゴくないから、地域活性化なんてできるわけない」という、(自分も含めて)言ってしまいがちな”言い訳”を、予め封じています。

そんな平凡人が、ひょんなことから地元の田舎で、自分の実家を活かしたビジネスを始めることになり、やがて地域、日本の活性化に取り組むことになる、というのが物語の大筋です。主人公は、つまづき、時に大失敗しながらも、学んだり周りの人間から助けてもらいながら、着実に地域を元気にしていきます。と、同時に”仕事師”としても成長していく。

小説形式の良いところは、主人公に感情移入したり、ストーリーの先の展開が気になることで、ページを飽きずに読み進められること。単に事例や教訓が並列に置かれていると飽きちゃうところを、物語の推進力(読者をドライブさせる力)を借りることで、次のページを繰らせることに成功しています。

一方で、読者に感情の起伏を与えるだけでなく、作者の実際の体験に基づいた地域活性の事例が、注釈として豊富に織り込まれています。いわば、”物語と事例集の良いとこ取り”。再読する場合は、その注釈だけを拾って読んでも有益だと思います。

 

地方活性化を”見る目”が変わる

地方活性化の取り組みとして、よくある行政主催のイベント。しかしそのイベントの予算と見合っただけの経済効果が得られることは少なく、役所のエラい人たちは、単に動員人数の数字だけで、成功を図りがちだったりします。それならば、店の経営者が出店料を払って、しっかり売り上げを出そうとするイベントの方が街が勢いづく。

また、民間へ供される行政からの補助金。一見、自分が何か事業を起こすとなると、補助金があった方が有利に思いますが、補助金の申請や使用報告には多くの(金にならない)書類仕事が付いてくる。補助金目当てのコンサルタントも、甘い汁を吸おうとたかってくる。そして補助金ナシで回せない経営をやっていると、補助金を打ち切られたとき、たちまち行き詰まってしまう…。

などなど、今まで漠とした良いイメージを持っていた「イベント」や「補助金」が、この本を読み進めることで、かなり具体的な手触りを持って理解できるようになってきます。イベントもやればいいってものではない、補助金も貰えばいいというものではない…という風に。少なくともここに書いてあることくらいは常識としてから、行政などとも付き合った方がいいんだろうな、と感じさせられました。

 

”個人でビジネスを起こしたい人”にも役立つ

地方活性化にはさして興味がない。でも自分でビジネスを起こしたい(飲食店や物販など)と思っている人はけっこう多いはず。この本には、そんな人たちにもすぐに役に立つtips(知識・情報)がいっぱい詰まっています。

遠くからでも自分の店を目指してやって来てもらえるような価値を作る、チームには明るいメンバーを集める、良き人材に出くわしたら、決して離してはならない…etc。

自分の事業で成功したいと思ったら肝に銘じておきたいことたくさん書かれています。そして、そういう重んずるべきビジネスの原理を大切にして、稼ぐことに成功した者だけが、地域活性化という大きな目標を達成できるのだ、ということも同時に教えてくれます。

つまり「価値を生み出して、人を集め、事業を成功させる=稼ぐ、ということだけが、個人の成功、しいては地域活性化への唯一の道である」と。

これらは、大企業や役所の中で、ヤル気をもって新たな価値を創出したい!と思ってる人間も、すべからく心に銘じておきたいことでもあります。

 

最後に

この本を読んでると勇気が出てくる。それは、新たな価値を生みたい、と考えてる人がぶち当たりそうな壁の事例が豊富に出てきて、それを乗り越えるための、具体的なヒントが、ロジックに基づいて提示されているから。

そういう意味では、いい仕事がしたい!と思ってる全ての社会人にとって役立つ本です。

本文のあとがき「おわりに」の部分にこうあります。

本当の働き方とは、自分で考え、こだわった結果としてつくり出した実績に応じて報酬をもらうことなのではないでしょうか。

本書を最後まで読んできて、作者が一番伝えたかった思いが、この一文に込められている気がしました。

自分も"自分でつくり出した実績に応じて報酬をもらう"存在でありたいと改めて思います。