仕事は人柄で決まる?
ナマ箕輪は”愛嬌”の人
自分の会社(放送局です)で、今、最もホットな本の編集者と言っていい箕輪厚介さんの勉強会が開かれました。タイトルは『猛獣使い編集者に聞く前例のない巻き込み術』。
箕輪さんに関してはツイッターやNewsPicksなどでそのコメントをよく読ませもらって「今の世の中のメディア状況を一番的確に捉えている人だなあ」と感じています。
また、その箕輪さんが編集している「お金2.0」(佐藤航陽)や「WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.」(佐渡島庸平)なども興味深く読んでいました。
その箕輪さんのお話がジカに聞けるということで、勉強会に参加してみましたが、期待以上に面白かったです。
話の内容自体は、今までご自身があらゆる媒体でお話されていたことだったので、特段目新しいということはなかったのですが(それでも、それらを整理して話してもらえたので、そういう意味では有益だった)、何よりも人柄が魅力的で、ほんと愛嬌のある人だな、と強烈に思いました。
例えば、「自分は毎月、一冊の本を出しているけど、まず重版かかりますね」みたいな発言があって、それに対して会場から笑いが起きると、「笑ってもらってよかった…。これで笑いがないと単なる自慢話になるから」といった具合。
堀江さんや見城さんなど、超有名人・業界人と本を作ってらっしゃるし、勉強会のタイトルも”猛獣使い編集者”だし、さぞかし強いオーラの持ち主かと思いきや、全然違いました。お話を最後まで聞いて、その接しやすい人柄が箕輪さん最大の武器なんだろうな、と思った。もちろん仕事の実力が伴ってのことですが…。
さて、この記事では、自分の備忘録も兼ねて、箕輪さんがどんな話をされたのかまとめておきたいと思います。
テレビでもネットでも本でもメディアに関心ある人なら、すごく意味のある話でした。あとコミニュティ運営に関する話も鋭かった。
アウトプットの量がすごいのは、オンラインサロンのおかげ
自分が主宰しているオンラインサロンは月額5000円(ちなみに堀江さんのは1万円らしい)。会員1100人ほど。
Facebookの秘密のグループがメインのコミュニケーションの場。
ものすごく働いてアウトプットをしているように思われているが、そんなたいしたことはない(←これは謙遜かもしれませんが)。事実、この勉強会の前にもサウナに行っていた。
アウトプットをたくさんできるのは、オンラインサロンメンバーのおかげ。現在、動画、イベント、コミュニティ運営など、全部で10チームが活動している。
箕輪さん自身が「こういうことやりたい!」と宣言するだけで、すぐアウトプットしてくれてる。
著者「死ぬこと以外かすり傷」10万部の売り方
芸能人でもなく、有名でもない自分の著書が10万部売れるなんてことはありえない。
内容だって面白くない(←ご自身の言葉です)。
それでは、なぜ売れたのか?
それは、ネットのプロモーション力。オンラインサロンのメンバーがSNSで拡散してくれる。1000人のメンバーの周りに1000人いるようなもの。本気を出せばamazon1位を獲れる。amazon1位は1日で3000部程度、売れることを意味する。ネットは一瞬でハックできる。
あと、圧倒的なアナログの影響力。
オンラインサロンのメンバーは半分は地方在住。地方はアットホーム。地方のメンバーがポップを持って書店を訪問し、箕輪さんの本を「よろしくお願いします」と言って回っている。時には書店員と飲み会などもしている。地方の書店が箕輪祭りみたいになっている。
従来の出版社の人間が地方を回るとなると、数ヶ月に一回がせいぜいだった。
自分がやったことはプロモーションと営業をアップデートしたこと。
今の時代、本の編集の力で差はつかない。差があったとしてもそれは誤差。自分の編集の力もたいしたことはない。アベレージくらいの能力はあると思うけれど。
自分が達成したのは、プロモーションと営業をアップデートしたこと。
今までは本のプロモーションといってもせいぜい新聞広告を打つくらいだった。
幻冬舎の見城さんは、テレビ局の人間と癒着して、「今度、この本の特集やってくれ」みたいなことをやっていたが。
誰もが面倒くさいと思っていた地方営業をオンラインサロンのメンバーがやってくれた。
←メディア状況の変化は誰でも分かっていて、このままの営業じゃダメだ、というのも誰もが感じている。その中で、箕輪さんだけが、従来のやり方を抜け出し、オンラインサロン等の方法で結果を出している。テレビの世界も見習うところ大。
オンラインサロンのメリット
ここで、我が社の人間から「オンラインサロンに参加するメリットは何?」という質問が。箕輪さんは3つに分けて話してくれました。
1.オンラインサロンでのワークはエンタメである。
世の中にある多くの仕事は、世の中に対して、インパクトは与えられない。しかし箕輪サロンの仕事はそれができる。
(←こういう仕事のことを批評家の宇野常寛さんは「世界の輪郭に素手で触る経験」と呼ぶそうです)
大学サークルだって、お金を払って活動する。それと同じ。楽しいからやる。要するにエンタメ。
落合陽一のインタビューの"文字起こし"をやれば、落合さんからのいいね!が来る。
これは堀江さんがいうところの、「遊びと仕事の境い目がなくなった」状態。
2.”個人の名前”で食っていくきっかけをつかめる。
カナダにいたヨシダさん(という人)は箕輪編集室に入って、NewsPicksの落合さんの番組や、堀江&箕輪さんがじゃれ合っている動画の編集をやっていた。そしてZOZOTOWNの記者会見の映像を編集などもするようになる。するとZOZOの前澤さんが「動画いいね」と言ってくれる。
手に職を持っている人間が、細かく序列待ちしているところをワープできるメリットがオンラインサロンにはある。
3.個人に居場所を与える
テレビが強い時は、学校での話題はドラマ、アニメ、バラエティなどのテレビの話題だった。
しかし今がみんなスマホで違ったものを見ている時間がほとんど。同じ職場なのにお互いに好きなものを知らない、ということも起こる。
そんな時代にオンラインサロンは”サードプレイス(家、職場に次ぐ3番目の居場所)的”な価値を提供できる。
月額として、飲み会一回分くらいの金で横のつながりができる。
(ここで我が社の人間から質問が)
オンラインサロンを続けるには、箕輪さんに価値があり続けないといけないんじゃないか?
(箕輪さんの回答)
コミニュティに愛着があると、主宰者である箕輪がダメになると、支えようとする。
(←のちにも出てきますが、コミニュティは参加する、コミットするというのがその本質のようです)
コミュニティはなぜできる?
歌が上手い歌手のファンクラブはコミニュティ化しない。それは”歌というコンテンツ”に対価としてのお金を払っているから。
AKBのファンクラブはコミニュティ。ファン自らお金を払い、総選挙対策委員会などをやったり、握手会のとき、アドバイスしたりしている。
なぜそうなるのか。
AKBには”不足”があるから。不足がないとコミットメントは起こらない。
コミニュティは宗教?
あのコミニュティは宗教(的)だね、と言うと日本では揶揄しているような響きがある。しかしこれは日本的現象。オウム真理教のトラウマが強すぎるのではないか。
ヨーロッパだと宗教的と言うと、ありがとうございます、と返される感じ。宗教に似ているのは悪くない。
カルト(宗教)とコミニュティの違い
カルトは”信仰”がベース。リーダーの言うことは有無を言わさず信じる。
コミニュティは”信頼”がベース。発言は自由。脱退の自由もある。
オンラインサロンの響きが胡散臭い?
これからオンラインサロンは生活に馴染んでくるはず。なぜか。
オンラインサロンがこれから盛り上がる理由①〜本やある種のサービスは、もはやコミュニティを巻き込まないとうまくいかない。
情報はスマホが出来てから、選ぶのが疲れちゃった。朝起きたら、もうすでにスマホに読みきれない記事がある。
コミュニティに所属して、ある特定の”人”にひもづく情報がその人にとって意味のある情報になる。
例えば「箕輪が良い」と言うと買ってくれる人がいる。つまりは1000人が買う。すると
ネットでは拡散する。最初の着火が大事。
企業はみんなそこで困っている。昔は宣伝を流せばいい、という単純なプロモーションだった。今はそれではピクリともしない。
オンラインサロンがこれから盛り上がる理由②〜SNSが閉じていくから
SNSをやっていると、いろんな人が発言の言葉尻を捕まえて、色々と言ってくる。それが面倒臭いので、本当のこと、込み入ったこと、オンラインサロンでしか言わなくなっている。
同じ目的を持ってるコミュニティだったら、つまらないことは言わない。
逆にオープンなところはある種、炎上起こす。
正直、SNSで絡んでくる人は金がない。しかしオンラインサロンのように5000円払うハードルを設けるとやって来ない。SNSは居酒屋のオープンスペースで、オンラインサロンは、個室みたいなもの。
(ここで質問が)
オンラインサロンのメンバーの入れ替えはある?
(箕輪さんの回答)
毎月100人くらい、勝手に入れ替わる。辞めるという選択肢があるのはとてもいいこと。メンバーでいるのに特に条件はない。金さえ払ってくれたらいい。逆に金払ってるからモチベーション高いやつしかいない。
メンバーの心理からすると、サロンへのコミット量が増えると、トクした感が出る。
お金の流れがサロンと会社とでは逆。作業を提供して、かつお金も払う。しかし辞めたいと思った瞬間に辞められる。会社は辞めたくても辞めない(辞められない)。
(ここでさらに質問が)
メンバーから集めた会費は再配分する?
(箕輪さんの回答)
ここが面白いところで、作業の対価を払った瞬間に労働になる。払った瞬間、「この作業にこのお金じゃ割りに合わない」などと思い始めるもの。
会費は税金みたいなもの。地方メンバーが上京した時に泊まれるシェアハウスを作る初期費用などに当てるつもり。 動画チームのマックやドローンなどにも。
質問コーナー
勉強会の最後は質問コーナーでした。
Q.)猛獣(堀江さんや見城さんなど圧が強そうな人)を扱うコツは?
A.)猛獣だと思ったことない。とにかくフラットにやる。あの辺の人はパワハラ体質。相手が怯えていると、勝手に起こり始めちゃうこともあるので、ヘンに下手に出ない。
ただ、マジメに答えると彼らが本当に好きってこと。あと仕事で結果を出す、というのはやはり大事。
Q.)人に接する時は北風?太陽?
A.)相手を好きになって肯定しまくる。その人が表現したいものを指摘する。
「それって伝わらないと思いますよ」みたいに。相手に「こいつは分かってる」と思われることが大事。分かってるやつに言われるなら人は言うことを聞く。誰しも自分の書いたものが伝わるかどうかは不安に思っているところがある。そこをサポートする。
ただ自分(箕輪さん自身)は今、波に乗ってるから、誰も何も言わない。何かミスったら、一斉に攻撃されると思う。
Q.)箕輪さんがNHKを巻き込むとしたら?
A.)NHKは直接課金しているのが強み。月額制で集金できるとチャレンジできる。NHKはそこをもっとアピールしていくべき。
本は売ろうとしているから、売れない。血行やうつ病などの健康ネタの本を出す→売れない。しかしそんなネタじゃないと企画会議を通らない。
自分は企画会議には出ない。会社に損はさせないから、出なくてもいいと思われている。赤字にならなければ文句は言われない。
Q.)録画してでもみたいTVは?
A.)ないんだよなあ。コンテンツは見ない。本もテレビも映画も…。
Q.)企画はどうやって思いつく?
A.)しゃべっててかな。
Q.)影響を受けた人は?
A.)幻冬舎の見城さん。ヒットが出るものにはドラマチックな展開があると教わった。
予定調和ではダメ。死線を何回乗り越えられるか。
見城さんはあり得ないことばかり要求してくる。発売日を5日前倒ししろ、とか
(他社の本を売るのに)幻冬舎の流通を使え、とか、無理は通すためにあるんだよ、とか。
働き方は堀江さんから習った。合理的で本質的。堀江さんの本にもなっている「多動力」をインストールしたらうまくいくようになった。
Q.)駆け引きはするか?
A.)ぼくは政治力の男。上司を接待することもある。生意気かもしれないけれど。
ご飯食べるのは定期的にやる。年1回くらい、見城会を開いて、見城さんに50万納めています。
大切なのは駆け引きすることではなく、仕事のパートナーとベクトルを合わせること。
著者と喧嘩する編集者は信じられない。なんて人の感情を読まないんだ、と思う。
「締め切り」と「著者の文章を直したいと言う気持ち」はベクトルが正反対。融通がきかない印刷所があったりすると、「印刷所、ウゼェ」と著者とベクトルの向きを揃える(←個人的には、このベクトルの向きを揃える、というお話が一番、心に刺さりました)。
あと、トラブルの時は出ていって問題解決を図る。
Q.)なぜ幻冬舎に残っている?
A.)幻冬舎の圧倒的なブランドがある。流通や営業というリソースも使える。
講演したらギャラ50万くらいもらえる。でも幻冬舎は辞めない。
(ちなみに)TVのスッキリ、ギャラ5万。5時に夢中は10万。