歴史探偵

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ららら♪クラシック~オーケストラ 鉄壁のアンサンブルの作り方~(2018年7月20日放送)ポイントまとめ

オーケストラは”社会”か”宇宙”か。

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※オーケストラに関する視聴者からの疑問・質問に答える2回連続の特集。ポイントをまとめました。前回の記事はこちら。

www.rekishitantei.com

 

今回の番組出演者

  • 高橋克典(歌手/俳優)
  • 牛田茉友(NHKアナウンサー)
  • 宮川彬良(作曲家)

 

番組冒頭はカッコいいオペラの序曲

番組冒頭は疾走感あふれるオペラの序曲でした。歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲。(グリンカ作曲)。初めて聴きましたが、かなりメロディーもキャッチーで一度聴いたら好きなるタイプの曲でした。

演奏は指揮:川瀬賢太郎さん、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団。

番組によるこの曲の解説テロップです。

息のあったアンサンブルが魅力なこの序曲

全員で奏でる疾走感あふれる部分と叙情的な旋律が交互に登場する

※番組の映像ではないですが、音楽の参考のためyoutubeの映像を張り付けておきます。

グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲 (クライツベルク) - YouTube

 

なぜオーケストラは動きがぴったり合う?

1つ目の視聴者からの質問は…

Q.弦楽器は弦を弓で押しても引いてもこすれば音がでるのに なぜ大勢の人が同じ弓の動きで演奏できるのか教えてください

作曲家・宮川彬良さんからの回答は…

宮川:これを見るとその秘密がわかる。皆さんが使っているパート譜。

いっぱい書き込みがあるでしょう。

高橋:アルファベットのVみたいな。

宮川:上がっていくとき(=弓を上に動かす)がこのVの字。下にいくとき(=弓を下に動かす)はこのホチキス(のような記号)。

※番組映像より。

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ナレーション:弓を上に向かって動かすことをアップ。反対に弓を下へ向かって動かすことをダウンと呼びます。その動きを決めているのがオーケストラを取りまとめるコンサートマスター。

三浦章宏さん(東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター)も場合、どんなふうに決めているのでしょう?

三浦:ダウンは弓の元から下がった動きなので強い音が出しやすい。最初からバーンという強い箇所が音楽の中には何か所もある。そういう所は必ずダウンに来るようにつじつまを合わせる。逆にものすごく静かに、静寂から始まる時はアップから始めた方がいい。

三浦:有名なベートーベンの5番「運命」の冒頭ですけど、ダダダダンのダンが強い方がいいので、アップから始めたほうがいい。

三浦:大事なところがダウンに来るためにアップから。

牛田:作曲家の方はそれは指定しない…?

宮川:する時はあります。どう考えてもこれダウンのイメージだというのは、僕はもうそこだけ書き入れておきます。

三浦:みんなで一緒に歌う一緒のフレーズのするためには、動きもそろっていた方が合いやすい。視覚的にもそろっている方がオーケストラの一体感が見えるのでは。

 

オーケストラの皆さんに協力していただいて実験。弓の動きをバラバラにして演奏してみる。

 

■ベートーベン「運命」の冒頭を弓の動きをバラバラにして演奏。

高橋:パワーとしてはちょっと濁る、混ざる感じがある。

牛田:力が分散している感じ。

宮川:ベクトルとしては逆。バラバラだったという印象。

団員①:強弱はつけようとするけれど、違うニュアンスをむりやりつける感じ。

団員②:すごくやりづらいですよね。後ろ向きに歩く感じ。

団員③:こういう激しい曲だと隣の人と衝突しないかという別の心配もある。

高橋:これだけの人数がいる。パワーを合わせて送ることが大事。

 

弦の動きをそろえてベートーベンの「運命」を演奏。

 

以下、曲演奏時のテロップ

  • 弓の上げ下げは主にコンサートマスターが 音のフレーズに基づき決めることが多い
  • 全員の動きを合わせることで 音色がそろって聞こえる
  • 弓の動きは 音楽を作り上げる大切な要素となっている

 

演奏中のトラブルはチームワークで乗り越える

2つ目の視聴者からの質問は…

Q.もしも演奏中に楽器が故障したら奏者の人たちはどう対応するの?

楽器が故障した演奏の例を紹介。

ナレーション:こちらはロンドン交響楽団の演奏会。曲の後半、オーボエ奏者に思わぬアクシデントが起こります。音を出すために欠かせない「リード」とよばれる部分がなんと演奏途中で割れてしまったのです。オーボエの命ともいえるリードが壊れてしまっては、演奏ができません。大ピンチのこのとき、彼がとった行動とは…。とっさに隣の奏者の楽器を奪い、何事もなかったかのように演奏を続けたんです。ピンチを感じさせないこの冷静さ。さすがはプロ!

川瀬:やっぱりプロ根性ってすごいな、って思いましたよね。管楽器ってメーカーによって、例えばキーの幅も微妙に違うし、隣の人の楽器が自分の楽器と全く同じシステムとは限らない。

川瀬:自分がいちばん音を出しやすいように、リードというのは削ったり。それを突然他人の楽器を何事もなかったかのように。すごいプロ根性。

高橋:オーボエ奏者の方がいるんで聞いてみたいんですけども。とっさにああいう対応ってできるもんですか?

オーボエ奏者:オーボエのリードも楽器も非常に繊細で複雑なつくりなので、本番中に音が出なくなる事はみんな一回ぐらいは経験している。リードも壊れやすいので、予備のものを必ず用意してステージに上がる。それを出すよりも奪って吹いた方が早いと判断したのだと思う。

牛田:演奏会で意外と多いのが弦楽器の弦が切れてしまうことらしいんですよね。

 

ららら的実験。「もしもコンサートマスターの弦が切れてしまったら?」この状況でオーケストラはどういう対応をとるのか。

 

 ■演奏中、コンサートマスターの弦が切れた想定する。コンサートマスターは壊れたバイオリンを左隣の人に渡し、代わりにその左隣の人のバイオリンを取って弾く。その左隣の人は壊れたバイオリンを後ろの人に渡し、代わりに後ろの人のバイオリンを取って弾く。以下同様に壊れたバイオリンはオーケストラの最後尾まで運ばれ、後ろに置かれていた予備のバイオリンと交換される。その予備のバイオリンはまた前へ前へとリレーされ、最終的にコンサートマスターに渡される。

高橋:バケツリレーみたいですね。ものすごい面倒くさいことをしている。どなたか出てきて「はい」って渡せばいいんじゃないですか?ダメですかね、それ。

宮川:その間、コンサートマスターが手ぶらでどうするって問題はあるよね?

高橋:そうか。

宮川:だから今のが正解なのよ。音も途切れない。みっともないこともほんの数秒。即興とはいえ、うまいことやらはるな~と思いました。

高橋:実際にご経験はありますか。

三浦:何回もあります。

宮川:今、人数が少なくなって弾いてたでしょ?だけど物足りない感はなかったでしょ?

高橋:あんまりなかった。

宮川:心意気がある。お前、今アクシデントか!じゃあ自分が倍弾いてあげようというような。そういうなんかね、気なんですよね。

高橋:別の所のフレーズがグッと上がってきて

宮川:他のセクションが頑張るぞ!とか。隣の人が頑張るぞ!というのはある。音楽って単なる物理現象じゃないもの。

高橋:音楽を止めないというチームワーク。これがすごいですね。

 

第2バイオリンは内助の功?

最後の視聴者からの質問は…

Q.オーケストラの中でバイオリンは第1と第2に分かれていますが、第2バイオリンはどんなことをしているの?

宮川:例えばチェロがドで、 ビオラがソで、 第1バイオリン(メロディー)がミだとすると、そのミの下のドを第2バイオリンがとろうとか。いわゆる「内声」って僕らは言ってるの。

※番組映像より。

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宮川:第1バイオリンと一緒にメロディーを弾くこともあれば、第1バイオリンのオクターブ下でメロディーを弾くこともたくさんある。メロディー弾いてたな、と思うと今度は伴奏に回る。つまり内助の功っていうのが正しいのか分からないけど、あれもやったりこれもやったりっていう、非常にやる事が多くて充実感にあふれたパート。セカンド(第2)バイオリンを弾きたい!という人は意外と多い。

 

ららら的実験。「もしも第2バイオリンがオーケストラにいなかったら」

 

宮川:第2バイオリンが沈黙してしまう。”内なる声”が消えた時に音楽がどれだけ寂しいものになるか、比較してもらいましょう。

 ■「フィガロの結婚」の一節をまずは「通常バージョン」で。続いて「第2バイオリンが沈黙したバージョン」で。

高橋:エレガントですけど、うずうずくるエネルギーはなくなってしまう。

宮川:そうですよね。さっきの興奮には至らないですよね。

宮川:じゃ今のところを第2バイオリンだけ取り出して、どんなことを弾いていたか聴いてみましょう。

 

■第2バイオリンだけ演奏してみる。

高橋:(第2バイオリンは)刻んでるんですね。

宮川:刻んでるって言っちゃうと、第2、第3のことをやってるって思いがちだけど、実はエンジンだってことだよね。それが内声のほんとに正しい理解で。そりゃあだって内蔵ですもの。

高橋:あまり目立たないけど、すごく重要なニュアンスを担っている。

牛田:第2バイオリンの方にもお話をお聞きしてみますね。

第2バイオリン:ファースト(第1)バイオリンはすごくきれいなメロディーを弾いているけど、例えばアンパンだったにしても、中がこしあん、つぶあん、白あん、全部味わいが違う。そういうのをこちら(第2)で色づけしている。常に周りを見ている。セカンドバイオリンの人たちは空気を読むのがうまい。すごい気遣いできる人が多いですね。

宮川:空気を作っているのは意外と一番上のメロディーではない場合が多い。

高橋:指揮者の川瀬さんから見て第2バイオリンっていうのは、どんな魅力のあるパートとお考えですか?

川瀬:モーツァルトのオペラは特にセカンドバイオリンが原動力となっている。例えるなら、湖の上に白鳥がいてすごく美しくエレガントに見えるけど、水面の下ではすごく一生懸命足をこいでいる。エレガントなものをさらにエレガントに引き立たせるのがセカンドバイオリン。だからとても重要な役割を果たしていると思う。

高橋:やっぱり知らないで見てると、ドンと一塊で、今はここ、今はここぐらいなんだけど、フレーズやパートが弾いていることの意味を知ると、オーケストラが興味深く、魅力がすごく立って感じることができる。

宮川:これは音楽の魅力ともいえるけど、通り越して社会の見本を見ている。人間を見ている。社会を見ている。もっというと宇宙を見ているような、そういう気になってくる。

 

「フィガロの結婚」を聴いてみる。

以下、曲解説のテロップ。

  • モーツァルト30歳の時に書かれたオペラの代表作のひとつ
  • 第1バイオリンがメロディーを奏でる裏で リズムを刻み 音楽に色づけする第2バイオリン。
  • リズム メロディー 伴奏などその役割は1曲の中でめまぐるしく変化する
  • ”内なる声”として音楽を輝かせるため オーケストラに不可欠なエンジンとなっている

 

最後に

オーケストラに関して「言われてみれば確かに気になる…」という素朴な疑問が、適切な解説と音楽とともに解明されていくたいへん面白い番組でした。また情報性の高い回があればポイントをまとめて記事にしたいと思います。