いい人 いい味 いい感じ(お店のメニューに書かれていた言葉)
スーパーホテルの「お薦めグルメスポット」リストにのっかってみた
仕事で旭川にやって来た。駅前のスーパーホテルに宿をとる。すべての仕事が終わって、一杯やろうと思い、ホテルのフロントで相談したら、おススメ居酒屋のリストをくれた。なんとなくの勘でその中の一軒を訪ねてみることに。
お店の名前は田子兵衛という。
地図を片手に店の前まで来てみると
人生に逆戻りなし田子兵衛知らぬは一生の損
とある。「なかなか自信たっぷりな言い回しをするじゃないか」と思いつつ、その自信がハッタリでなければいいな、と思って階段を上る。お店は2階でした。
初めてのお店の「緊張」と「緩和」
店の中にはカウンターと小上がりが。カウンターの向こうにお店の方がおらず、誰にもこちらの存在を気づいてもらえず、少しバツの悪い思いをしていたら、「気づかなくて、すいません」と調理場から若いお兄さんが出てきた。初めてのお店の緊張感が少し緩んでホッとする。
カウンターに座り、とりあえず生ビールを頼むとキンピラごぼうのお通しが出てきた。日替わりの田舎料理というのがこの店のウリとホテルでもらった案内にも書いてあった。
200円のアテで酒がチビチビできるじゃないか。近所にあったら重宝するだろうな。
お店のミュージックは昔懐かしのJ-POP。隣の男性二人連れは愉快に荻野目洋子のダンシングヒーローを口ずさんでいる。そのうち、女性の店員さんに日本酒のおススメを聞き始めた。
男性客:お姉さんだったらどれですか?店員:私の個人的な意見でいいですか?男性客:いいですよ〜
みたいな感じ。
その店員のお姉さんのあしらい方がなんというか、丁寧なのに絶妙にカジュアルで聞いていて非常に心地いい。これは良い店来たんじゃないか…。ひしひしとそういう予感がする。
”北海道”を味わう
さて、自分の酒のアテは何にするか。遠路はるばる北海道まで来たんだから、どうせなら地のものを食べたい。カウンター内のお兄さんに相談したら、生ズワイカニ爪の刺身を薦められた(冒頭の写真)。蟹の刺身なんてあるんだ…。知らなかった。
エサシから直送しているんですよ
とお兄さん。エサシと聞いて頭の中で「江差」という漢字を当てていたら、よくよく聞いてみると「枝幸」といって、オホーツク海に面したカニの漁で有名な土地なんだそうだ。この漢字のエサシに出会ったのは初めて。やっぱり北海道のこと何にも知らない…。
カニ爪を持ってちゅーっと吸うように食べる。カニ肉のひんやり感、プルプルした食感もたまらない。これは美味い!そしてその刺身に合わせるのは旭川の地酒・国士無双。バランスよい辛口だ(ラベルには居酒屋の「田子兵衛」とあった。酒蔵に頼んで作ってもらっているらしい)。「北海道=酒どころ」というイメージなかったけど、なかなかどうして旨い酒です。
肉がたわわについた爪の根元の部分を食べ終わり、ごちそうさま、という気分で器は脇に寄せておいた。先ほどのお姉さんが「まだ食べれますよ〜」と爪先を剥いてくれた。
なんと、爪先にもカニ肉入ってたのね。ありがたや〜。これでもう少しお酒のアテがつながった。
北海道の地のものといえば、富良野アスパラバターというのもあった。
富良野というだけであのドラマ「北の国から」で見ていた大地のイメージが広がり、美味しそうな予感が…。京の賀茂なすと言われると、2割増しに美味しそうに感じるのと同じかな。でもイメージだけでなく、実際にこのアスパラバターは美味かったです。
「いくら」か「ジンギスカン」か。それが問題だ。
さて、自分は"ご飯"をアテに日本酒を飲むのが好き。そこでシメも兼ねて丼ものをたべようと思いメニューをしげしげと眺めながら「めじか鮭のいくら丼」と「生ラムジンギスカン丼」のどちらを食べるべきか思案していた。
すると、お姉さんが「私ならいくら丼かな…」と話しかけて来た。「どう思う?」とカウンターのお兄さんにも話をふる。「ぼくもいくら丼かな」とお兄さん。二人ともいくら推しであった(最後に分かったが、このお二人は夫婦であった)。
その二人の言いようが、押しつけがましくなく、ほんと自然に「いくら丼がいいですよ」とおっしゃるので、こちらも自然に「じゃ、いくら丼で」となった。
で、いくら丼、いただきました。
日本酒は少し酸味のある「男山 生酛」と合わせて。口の中でいくらがぷちぷち音を立てて弾けてた。美味しかったです。
記憶に残るお店
居酒屋に行くのは「間違いなく趣味です!」と言い切れるくらい好きなので、自分の住まいの近くはもちろん、旅先・出張先でもいろんなお店に入ってきたが、こちらの田子兵衛は本当に居心地が良かった。知らない土地に自分の居場所を見つけたような感じ。このお店の魅力を文章にするのは難しいけれど、お兄さん、お姉さんの話し方、まとっている空気感などが柔らかく、とてもリラックス出来た。もちろん一品一品の料理も質が高い。記憶に残るお店になりました。
ちなみにこんなお二人。結婚して一年。新婚さんでした。