歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

フェルメール展@上野の森美術館・感想

2700円(当日券)は確かに高い。でもそれだけの価値がある。

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写真を撮るだけでこれだけの人…

 

  

行くかどうかで迷った でも行って良かった!

前売券(2500円)、当日券(2700円)…。この金額の高さに「えっ、マジで!」と驚き、フェルメール展、正直行くの迷いました。

でも、20年ほど前、大阪でフェルメールの”生(なま)絵”に接して「本物の絵ってこんなにチカラがあるのか!」と衝撃を受けて以来、フェルメールは自分にとって特別な画家でもありました。

で、色々調べてみると、国内過去最多となる9点の作品が各国の美術館から集結しているという。「ん〜こんなチャンス、滅多にないかも」と思い直してやっぱりフェルメール展、行ってみました。

最高でした…。

感動しました…。

やはりフェルメールは別格なのだと思い知らされました(こんなことはメディアでもどこでも強調されていることなので、今さら口に出すのは恥ずかしいのですが、本当なのでしょうがない)。

この記事では、その圧倒的な光を放つフェルメールを心底味わうためにはどうすれば良いか(どうすべきだったか)ということを中心にまとめてみたいと思います。

 

美術館を訪れる時間は超重要。決してブロックのアタマの時間に行ってはいけない。

こちらは展覧会の公式HPの画面です。

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1日が6ブロックの区切られ、自分が入場したい時間のチケットを購入します。

自分は28日(水)という平日の③13:00〜14:30のチケットを購入。12:50に美術館に行ってみました。

するとこのありさま…

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時間指定チケットなのにも関わらず、長蛇の列でした。これじゃ何のための時間指定だか分かりません。

HPにもひと言、書いてありますが、仮に13:00~14:30のブロックならば枠内時間の後半に入るのが必須です。現場の係員の人は14:15くらいが良い、とおっしゃっていました。自分も素直にその指示に従い、14:10ごろ入場しましたが、行列はきれいに消失していました。

一旦、入場してしまえば、その日の閉館まで滞在できます。ただし、14:30を越えての入場はできないので、そこだけはご注意を。

フェルメールの作品が鎮座する「フェルメールルーム」は展示の一番最後。体調万全エネルギー満タンで鑑賞するためにも、入場前の行列に並んで消耗するのは避けたいところです。でもやっぱり中は混んでいましたが…。

 

解説の小冊子、音声ガイドは無料で付いてくる

入場すると、まず写真のような絵を解説した小冊子がもらえます。

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こちらは無料。この小冊子のおかげで、絵を近づいてみた後、少し引いた位置で絵の解説をじっくり読む、という行動が可能になっています。

あと音声ガイドも無料です。ま、自分は当日券で2700円支払ったので「そのくらいはしてよ」とも思いましたが…。

音声ガイドの声のうち、ひとりは石原さとみさんでした。TBSドラマ「アンナチュラル」で相当、ファンになったので、この仕様は嬉しかったな。

 

フェルメールルームへの道行きはドキドキ!

フェルメール展全体の構成は写真のようになっています(小冊子の中の図面)。

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フェルメールの作品8点が展示された「フェルメールルーム」はまさに特別空間で、他の絵とは隔絶されています(フェルメールルーム以外の展示室は、同時代のオランダ絵画で占められています)。

展覧会の空間構成としては、フェルメールルームへのアプローチが最高。白い廊下を歩いていくと、部屋の入り口から、紺碧の壁に飾られたフェルメールの絵が少しずつ見えてくる…。「おお、これがフェルメールの作品群か!」と、胸がドキドキしました。

この空間を設計したデザイナーはいいセンスしてます。

 

自分がもう一回鑑賞するなら、この順番で

フェルメールルームは一番最後。だけども僕がもう一回、鑑賞するとしたら、入り口から、ダーっとフェルメールルームまで行ってしまって、フェルメールの絵をじっくり鑑賞してから、また入り口まで戻り、他の絵を見た後で、もう一度フェルメールを楽しむと思います。

それくらいフェルメールの絵とその他の絵じゃレベルが違うし、フェルメールの絵は誰もがじっくりと見るので、一枚の絵を鑑賞するのにかかる時間とエネルギーが段違いなのです。

ただ、他の絵を見ることで「フェルメールも当時のオランダの画風の中から出現したんだな」とそういった関係性を感じることができるので、展示順通りに鑑賞する、という方法も捨てがたいのですが。

ただ、最初の方の絵を真剣に鑑賞しすぎて、フェルメールルームでは疲れて絵をなおざりにしてしまった…ということは避けた方がいいと思います。正直、まあまあの確率で、平凡な絵にも遭遇します(あ、もちろん一流の絵の中での平凡ということですが)。

 

フェルメールの絵は”恋心”のドキドキ!

ではフェルメールの絵は何がすごいのか。

解説の小冊子冒頭のあいさつ文によれば

ミステリアスな緊張感をたたえた静謐な空間、光の粒子までをも捉えた独特な質感

 とあります。

もちろん、それらの要素もよく分かるのですが、僕がフェルメール最高!と感じるのは「登場人物の表情の、神業的リアルさ」からです。

「リュートを調弦する女」の、自分の感覚を耳に集中して、音の高さを確認する女性の表情。

「手紙を書く夫人と召使い」の、召使い。彼女の、女主人の恋に対して何とも言えない含みを感じている表情。

「手紙を書く女」のこちらを向いて、「なあに?」と言い出さんばかりの表情。

どれも「そういう瞬間の人間て確かにそういう表情するよなあ、わかるわかる」というような、人の感情の一瞬の真実を捉えた顔ばかりです。

「手紙を書く女」なんて美人だし、ちょっと気になる女の人と目が合ったような感情を思い出してドキドキします。この絵の前からは去り難かった。ずっと見ていたいくらい。

ここまでくると”絵で描く文学”のような気も。いや、どんな文章達筆な小説家が、人間の表情を描写しても、フェルメールの絵一枚が訴えてくる説得力には勝てないようにも思います。

フェルメールの絵を見て、そういう感情を抱くのは僕だけではないのでしょう。フェルメールルームでは、鑑賞者の誰もが、食い入るように絵を見つめていました。僕も相当いろんな展覧会に行ってきましたが、ここまで絵を真剣に見る人が多い展覧会は初めてです。それはただ単にフェルメールの絵が有名だから…というミーハーな気持ちだけではないはず。フェルメールの絵の圧倒的な魅力ゆえに、だと思います。

 

最後に

チケット、確かに高いけれど、それだけの満足感、幸福感を味わわせてくれるフェルメール展。”人間(の心)を感じるのが好き”という人はぜひ、行ってみてください。