歴史探偵

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なぜ日本はポーランドに敗北した?

賛か否か。日本国民の意見が真っ二つに分かれた試合。

サッカーW杯ポーランド戦、残念ながら日本は負けてしまいました…。後半最後の時間稼ぎのボール回しについては、批判する人も多いけれど、自分はあれで良かった、と思う方の人間です。今回の代表は決勝トーナメントに行くことが第一の目標で、その目標をかなえるために確率論的に最善の策があの逃げ切り作戦だと西野監督は判断したんだと思います。もちろんセネガルが1点取ってコロンビアに追いつけばあの作戦は失敗に帰すわけですが、スポーツは(というか人生も?)全ては確率なので。美学より結果。西野監督の泥臭い作戦のおかげでもう一試合日本代表を応援できます。

それはさておき、今回日本は勝つか、引き分けで決勝トーナメントに自力で進める状況でした。ではなぜ日本がポーランドを上回れず、結果敗北することになったのか。参考になった識者の分析をまとめてみました。

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スタメン6人入れ替えはやりすぎ?

金田喜稔(サッカー解説者)

まずポーランド戦のスタメンを見て、驚いた。1勝1分だったコロンビア戦とセネガル戦の先発から6人も入れ替えるとは……。西野監督は思い切った策に出たね。

確かに決勝トーナメント以降のゲームを見据えた時、体力の消耗が激しかった原口や乾らを休ませる必要はあったはずだ。ただ、グループリーグの最終戦はなにが起こるか分からない。ドイツが韓国に敗れるなど、他グループでは“まさか”が起きていた。
 (中略)
それに日本はどんなメンバーでも同じ力を発揮できるほど成熟したチームではないし、グループリーグ突破が確実だったわけでもない。

だからこそ、メンバーを代えたとしても、せめてふたりまでだったのではないか。現にポーランド戦はチームとして機能しなかった。

金田喜稔がポーランド戦を斬る!「ラスト10分の戦い方はなんだったのか…恥ずかしくて怒りがこみ上げてきた」 | サッカーダイジェストWeb

 

浅井武(筑波大学大学院教授)

初先発した6人に、主力の座を奪うようなプレーをした選手は、残念ながらいない。GK川島は、失点こそあったが、きょうは集中力のあるプレーで、そこは収穫。

試合速報・解説|2018FIFAワールドカップ ロシア:読売新聞

読売新聞、サッカーのテキストによる実況解説なんてやってたんですね…。知らなかった。今度から見てみよう。

 

白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

今日の試合運びから判断するかぎり、さすがに6人を入れ替えたのは正解とは言えない。首位通過できるチャンスがありながら、ベストメンバーで戦わなかった点で納得できない部分がある。疲労を考慮して2~3人のチェンジなら理解できるが、やはり6人は多すぎる。その点で、この試合に関していえば6人変更というギャンブルは失敗に終わった。

【ポーランド戦|戦評】先発6人入れ替え、終盤の時間稼ぎ。西野采配は正解だったのか | サッカーダイジェストWeb

 

林舞輝(ポルト大学大学院/ボアビスタU-22コーチ)

この試合、日本は先発を6人入れ替え、[4-4-2]を採用。突然この布陣を使った意図だが、おそらく、カウンターのためにポーランドの[4-4-2]にそのまま噛み合わせて当てにきたということなのだろう。猛暑と中3日いうコンディションの中、フレッシュな選手を使い前の試合でプレーした主力を何人か休ませることを選んだ。

だが、メンバー構成のバランスは非常に悪かった。悪いというか、どうしても矛盾してしまう。例えば、右サイドMFに本職でない酒井高徳を入れた理由をポーランドの強力なサイドアタックを封じるためだと解釈すると、左サイドに守備力がない宇佐美を使ったのと整合性が取れない。実際、左サイドから大きなチャンスを何度か作られていた。また、相手のサイドアタックはある程度は封じることに成功するも、自チームへのカウンター機能の実装には失敗した。例えば、カウンターを採用するならば、スピードのあるアタッカーが必要だが、日本の前線にカウンターで能力を発揮できるようなスピードのあるアタッカーはいなかった。右サイドMFに酒井高徳を使った時点で右からの攻撃は捨てているし、左の宇佐美もカウンター型の選手ではない。主力を休ませたかったのが大前提であろうが、端的に言えば、「23人のメンバー選考を間違えました」と認めているようなスタメンであった。

必然のギャンブル?ポーランド戦、日本はなぜ機能しなかったのか? | footballista

この林さんの記事、リアリズムに徹した分析で非常に読み応えがあります。是非全文読んでみてください。日本では終盤のボール回しの是非についてかまびすしいですが、そもそもその状況に陥ること自体、日本に満足な攻守のプランがなかったことを示すものだという主張です。「確かに…」という他ありません。また「ああいうボール回しこそ日本の子どもたちに見せるべきだ。あれこそサッカーのリアルなのだから」という意見にも賛成。精神論よりリアリズムを!

 

戸田和幸(サッカー解説者)

(ポーランドに)これだけ多くの危険なカウンターの機会を与えてしまった背景には、柴崎と山口の役割分担、そして単調な攻撃とリスク管理が足らなかったということが挙げられます。中盤センターの2人が交互に最終ラインに入る形で数的優位の状況を作り、ビルドアップを行い、外側・内側・ライン間とパスルートを多く作りながら安定して敵陣へと入り、ゴールを目指す。これが今大会で日本が見せてきたサッカーですが、この試合では柴崎が最終ラインに下りた時の山口の役割がはっきりしませんでした。

また逆の関係になった時、つまり山口が後ろに下りた時のビルドアップもなかなかスムーズにはいきませんでした。前半18分にはボールを持ちながらパスする相手を探してしまい、時間をかけてから槙野に斜め後ろの横パスを出したため、相手にプレスのタイミングを与えてしまい、結果的に宇佐美のところでロストしてしまいました。

前半19分には、相手が動く前に長い縦パスを武藤嘉紀に出してしまいロスト。また前半26分には川島から受けたボールをそのまま真っすぐ岡崎慎司へ長めの縦パスを入れ再びカットされています。この場面については、こぼれたボールがもし相手に渡っていたら相当に危険な局面を迎えていた場面でした。先を見据えて、長谷部誠のコンディションを考慮しての山口起用だったと思いますが、柴崎との関係性、連係を考えても厳しい試合となってしまったのは間違いありません。

消化不良のポーランド戦を戸田和幸が分析(スポーツナビ) - ロシアワールドカップ特集 - スポーツナビ

非常に読み応えのある戸田さんの記事。ツイッターでも戸田さんのテレビ解説を賞賛するツイートをよく見ます。今後、注目して見ていきたい識者のひとり。

 

作戦としての試合終了間際のボール回し

秋田豊(日刊スポーツ評論家)

日本は、後半39分から流し気味にプレーして終了ホイッスルを待った。イチかバチかの采配と思うかもしれないが実は、これはチーム力の勝利。当然、スカウティング・スタッフがコロンビア-セネガル戦を現場で分析し、試合の流れなどを随時、監督に報告している。報告されたデータをもとに、最終的には西野監督が判断し、戦い方を決める。指揮官は、そのままコロンビアが1-0で勝つと判断し、ピッチに指示を出した。

鉄則を覆した西野采配 初の8強入りも夢ではない - 熱血秋田塾 - サッカーコラム : 日刊スポーツ

 

戸塚啓(ライター)

82分に3人目の交代選手として長谷部誠を投入することで、西野監督は選手たちに「このままでいい」というメッセージを届けた。

コロンビア対セネガル戦の結果には介入できないだけに、自分たちのゲームでは「万が一が起こらない状況」を選ぶ。0-1の敗戦を受け入れ、2位でベスト16へ臨むことを決断したのだ。

試合終了のホイッスルを聞くまで同点ゴールを目ざせば、観衆からブーイングを浴びることはなかった。フェアプレーポイントの優位性が崩れ、セネガルに2位を譲ることになったとしても、美しき敗者、勇敢なサムライとして讃えられたかもしれない。

日本はそうすべきだったのか。誰もが納得する最適解はない。ひとつ言えることがあるとするなら、西野監督の決断は一方的に否定されるものではないということだ。

ブーイング覚悟で選んだ「敗戦策」。西野監督の決断がもう1戦を生んだ。(2/4) - サッカー日本代表 - Number Web - ナンバー

 

宇都宮徹壱(写真家/ノンフィクションライター)

コロンビア戦ではアグレッシブなサッカーで運を呼び込み、セネガル戦では西野体制以前の積み重ねを生かして2度のビハインドを追いついた日本。しかし、メンバーを入れ替えてグループ突破を目指すには、やはり戦力と準備の不足は否めず、最後は理想をかなぐり捨てての見苦しい戦術を採らざるを得なかった。その現実をわれわれは真摯(しんし)に受け止めつつ、この決断を下した西野監督と着実に目的を遂行した選手たちに、まずはねぎらいの拍手を送るべきではないだろうか。

「感動をありがとう」とか「自分たちのサッカー(に殉じる)」から決別し、貪欲に次のステージを目指す。日本代表が、そうした新たな次元に到達した瞬間を、ここボルゴグラードでわれわれは目の当たりにすることとなった。

アイロニーを含んだ日本代表のGL突破(宇都宮徹壱) - ロシアワールドカップ特集 - スポーツナビ

 

イビチャ・オシム(元日本代表監督)

リーグ突破という困難な目標の達成を目前にして、すべてを台無しにするわけにはいかない。90分が過ぎ去るまでは決して安心できない状況で、チームは不安定にもなりやすい。ラウンド16に行くための贈り物など何もない。

(中略)

望み過ぎてすべてを失い、後に失望することがないように。それでは駄目だ。知るべきはあまり大きな望みを抱かないことだ。それで失望しては元も子もないからだ。ここまで成し遂げたものを台無しにするのは避けるべきだ。

オシムはベルギー戦をどう見るか。「可能性は日本の方が少し高い」 - サッカー日本代表 - Number Web - ナンバー

オシムさんに日本が取った作戦を肯定してもらえたのは単純にうれしい。

 

日本はゴール前の精度を欠いた

浅井武(筑波大学大学院教授)

私の研究室でまとめたデータによると、日本代表は相手のバイタルエリア(ベナルティーエリア手前のゾーン)に攻め込んでのパス成功率が、ポーランド戦は47%で、相手を10ポイント下回った。セネガル戦は80%以上。好機でのプレー精度を取り戻すのが8強への条件となる。

試合速報・解説|2018FIFAワールドカップ ロシア:読売新聞

 

岩政大樹(元日本代表)

日本代表は、ボール保持に関してはある程度どの国とも遜色なくやれます。しかし、だからといって、それを「対等」と言ってしまうとまた違う気がする試合に、今回もなりました。決定力に差があるなら、相手より明確な決定機を作り出さなくては勝ちきれないということです。
スペースを作り、前線に運んでフィニッシュに持ち込む形や精度。逆に、相手にスペースを与えず、侵入されてもゴール前をブロックする判断の質。ポーランドは決してチームとしての”うまさ”は感じさせませんでしたが、やはり両ゴール前においては精度も判断も質に差があると感じさせました。

【岩政大樹】16強の壁を破れるか? 世界で”勝ち切る”戦いはベルギー戦に持ち越し | サッカーダイジェストWeb

 

痛恨!セットプレーからの失点

松木安太郎(サッカー解説者)

あの失点は、レバンドフスキにふたりが引っ張られて、フリーになったベドナレクに決められている。マークのミスだったね。

【松木安太郎】ブーイングなんて気にするな!勝ち進むために泥を飲んだ西野監督の決断は間違ってないよ | サッカーダイジェストWeb

 

元川悦子(サッカージャーナリスト)

 「マンツーマンでやっていて、僕と(柴崎)岳がゾーンで守っている。ファーサイドに来たボールは個の責任だと思っている」と吉田麻也はマークを外した酒井高徳の問題点を指摘した。「ベドナレクは練習から結構、点を取るので『危ないよ』と伝えておいたんですけどね」とチーム全体の警戒心を煽っていただけに、努力が結実せずに悔やまれたことだろう。

守備崩壊を食い止める吉田麻也。批判されようとも…16強の道を開いた日本の強固な結束力【ロシアW杯】 | フットボールチャンネル

 

最後に

ポーランド戦で6人のスタメンを入れ替えた西野監督。「あれは変えすぎ…」の声もありますが、主力の体力を温存できたとも言えます。次戦はベルギー。今大会トップクラスの攻撃力を誇る強豪です。今度は日本もガチンコでぶつかってもらって、ぜひ史上初のベスト8、目指してほしいです。

 

※ベルギー戦の記事のまとめです。

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※大胆な策を繰り出す西野監督が気になって急遽読んでしまいました。

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