歴史探偵

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なぜ日本はコロンビアに勝利した?

サッカーW杯で強豪・コロンビア相手に歴史的な勝利を手にした日本。直前のハリルホジッチ監督の解任騒動もあり、下馬評も低かった日本がなぜ勝てたのか。その理由についてメディア記事及び識者の分析をまとめてみました。

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試合開始早々のコロンビア 1人退場

セルジオ越後(nikkansports.com)

采配で勝ったわけじゃない。試合開始早々にPK獲得、相手の退場というプレゼントがあったから勝てた。

後半にロドリゲスが出てきて助かった/セルジオ越後 - セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」 - サッカーコラム : 日刊スポーツ

木崎伸也(スポーツライター)

見方によっては、相手のミスに助けられたと言える部分もある。
前半3分、香川のシュートをMFカルロス・サンチェスが手で防いで一発退場。日本は約90分間、1人多い状況で戦うことができた。午後3時キックオフで30度近くまで気温が上がり、これが大きなアドバンテージになった。

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【W杯勝利】「サランスクの奇跡」を呼んだ、西野監督の3つの独自性

試合開始直後にコロンビアが1人退場になったのが、やはりこの奇跡の出発点だったと思います。それにしても香川はPKをよく決めた。半端ないプレッシャーだったろうに。リプレイで見てみると、ゴールの真ん中右くらいにキメてるんですね。キーパーの動きがよく見えるほど落ち着いていた。

 

西野監督の采配が的中した

植田路生(フットボールチャンネル)

(西野監督)

「数的優位が優位ではない。ポジショニングをいかにとるか。得点した後、コロンビアにポジショニングで優位に進められた」

西野朗はあくまで引かなかった。前に出た。そして1つ策を講じた。原口元気の位置をやや中央寄りに変えた。これで酒井宏樹の攻撃参加がしやすくなった。原口は語る。

「中で受けろという指示があった。(香川)真司くんが左に流れることが多かった。右はなるべく簡単にやって左に上手く展開するのを意識した。(酒井)宏樹と話し合いながらやっていた」

再び日本が流れを掴んだ。コロンビアを押し込み、時間帯によってはハーフコートゲームのようになった。

日本代表はなぜ勝てた? 西野朗とペケルマン、両監督の策で追う勝負の分かれ目【コロンビア戦/ロシアW杯】 | フットボールチャンネル

70分、香川に代えて本田を投入。交代意図はどこにあったのか。本田が語る。「サコ(大迫)がつなぎに参加し過ぎていた。西野さんは一か八か中にいさせたい、その伝言があった」。大迫がつなぎ役になってしまうと、ボールは回しやすいが、中で誰もいなくなる。コロンビアとしては守りやすくなる。西野朗が指示したのはポジショニングの修正だった。

「誰を攻略ではなく、サイドに起点を。酒井や本田など。両サイドでボールを動かしながら優位性をつくっていく」(西野朗)

ほぼ同時に、ペケルマンも動く。MFエスキエルドに代えてFWカルロス・バッカを投入。「前に行きたい、日本を苦しめたい、ゴールを入れたい」。ペケルマンは勝負に出た振り返ればここが勝負の分岐点だった。

日本はさらに優勢に試合を進めるなかで、73分、CKを得た。本田が左足で蹴り、大迫が競り勝った。ボールはゴール端に吸い込まれ、GKオスピナは為す術がなかった。2-1、勝ち越し。

本田はこの決勝点を振り返る。「練習でやっていたことが出た。サコが練習でもCKからよく点をとっていた」。日本にとってはある意味、想定内とも言える。だが、ここで本田を入れて仕事をさせることに西野朗の勝負師としての真髄がある。

日本代表はなぜ勝てた? 西野朗とペケルマン、両監督の策で追う勝負の分かれ目【コロンビア戦/ロシアW杯】 | フットボールチャンネル

 

木崎伸也(スポーツライター)

西野監督がその(本田と香川を共存させる)最適解を見つけたと言っていいだろう。
先発で香川を起用し、後半途中にジョーカーとして本田を投入するという“役割分担”だ。ピッチという空間軸では共存してないが、90分という時間軸の中では共存している。今回のコロンビア戦では、後半25分、香川に代えて本田を投入。香川が1ゴール、本田が1アシストをあげ、見事にこの起用法が的中した。

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【W杯勝利】「サランスクの奇跡」を呼んだ、西野監督の3つの独自性

ハリルホジッチ監督解任の過程が非常に不透明に感じられたので、試合前までは西野監督には、”不信感”と、よくこんな困難な時期の監督を引き受けたな、エライ…という”ヘンなリスペクト”がないまぜになった複雑な感情を抱いていたんですが、この勝利を見て、西野さんに謝りたい気分になりました。相手の1人退場というラッキーがあったとはいえ、確実に勝利したのはやはり偉大だと思う。加えて、各識者の分析を読んでいると、采配もピタリと当たっていたんだな、ということがよく分かります。確かに後半の日本選手の動きは見違えた。前半は横パスばかりで退屈だったのに、後半は見ていてものすごくワクワクした。ハーフタイムに的確な指示(ゲキ?)を受けたのだと推察できます。

あと本田についてはどうなのだろう。木崎さんは本田の投入が奏功した、と書いているが、ツイッターなど見ていると、運動量は少なく、ボールキープもできず(ボールロストが多く)出さない方がいいという意見も多いです。次のセネガル戦でも本田の起用法が一つの見るべきポイントになりそう。

 

ハメス・ロドリゲスの調子が悪かった

スポニチ Sponichi Annex サッカーの記事

切り札の背番号10が“大ブレーキ”だった。4年前の日本戦で途中出場から1得点2アシストを挙げ、大会得点王にも輝いたMFロドリゲスは、左ふくらはぎ痛でベンチスタート。試合前、ハーフタイムともにほとんどアップをしておらず、後半14分から登場しても運動量、キレともに本調子にはほど遠かった。後半33分の決定的シュートは大迫に阻止された。

コロンビアのペケルマン監督「日本は自信を持っていた」切り札ハメスがブレーキに― スポニチ Sponichi Annex サッカー

 

セルジオ越後(サッカー解説者)

後半、万全の状態でないロドリゲスが出てきて、むしろ助かった。球を追わないから相手は9人になったも同然で、3つ目のハンディをもらったようなもの。

後半にロドリゲスが出てきて助かった/セルジオ越後 - セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」 - サッカーコラム : 日刊スポーツ

 

植田路生(フットボールチャンネル)

59分、キンテーロに変えてMFハメス・ロドリゲスを投入。ハメスは筋肉系のトラブルを抱えていた。負傷の情報を流したと思えば、元気に練習参加する様子を見せるなど情報戦を仕掛けてきたが、日本戦ではできれば使いたくなかったのが本音のようだ。

日本代表はなぜ勝てた? 西野朗とペケルマン、両監督の策で追う勝負の分かれ目【コロンビア戦/ロシアW杯】 | フットボールチャンネル

ロドリゲスは、前回大会の日本戦で、DFを軽やかなステップでほんろうしてゴールを決めるシーンが何度もリプレイされているので今回も脅威だな…と思っていましたが、昨日の試合ではほとんど目立ちませんでした。いくら世界トップクラスの選手といえど、体調が悪いとガクンとパフォーマンスが落ちることがよく分かりました。

 

日本には勇気・自信があった

金子達仁(スポーツライター)

日本サッカー史上初めて南米のチームを圧倒した後半の50分間は、相手が10人だったからというより、日本の選手が前半は出せなかった勇気を見せたからだった。ボールをつなぐ勇気。縦に入れる勇気。なにより、コロンビアを圧倒しようという勇気――。

初めて日本人であることを誇らしく思えるW杯― スポニチ Sponichi Annex サッカー

 

宇都宮徹壱(写真家・ノンフィクションライター)

「選手は頑張ってくれたし、前半で同点に追いつくことができた。
しかし。同じだけの面積を1人少ない状況でカバーするのは、どんなに技術的に優れた選手でもなかなかできることではない。
(中略)日本は自信を持っていたので、(挽回するのは)難しかった
試合後のペケルマン監督の談話である。ハーフタイムでの修正が功を奏し、日本は得意とするパスサッカーを駆使しながら、相手を消耗させることに成功した。そして何より、敵将が語るように「自信を持って」ミッションを遂行できたことが大きかった。思い返せば過去5大会の初戦で、これほど日本が自信あふれるプレーを見せたことは記憶にない。
日本がW杯で初めて南米勢に勝利したこと(しかもアジア勢としても初の快挙)は、確かに素晴らしいことだ。しかし、日本が初戦で自信あふれるプレーを見せたことは、それと同じくらい価値のある快挙と言えよう。

屈辱から奇跡へ、リベンジを果たした日本(宇都宮徹壱) - ロシアワールドカップ特集 - スポーツナビ

こんな短期間に選手に勇気・自信を与えた西野監督の人格力はすごい。やはりハリルホジッチは選手の心をつかむのに失敗していただろうか…(実際のところはわかりませんが)。

 

コロンビアに驕(おご)りがあった

イビチャ・オシム(元日本代表監督)

コロンビアが最初にピッチに姿を現したとき、私は彼らの傲(おご)りを感じた。2014年ブラジルW杯で準々決勝まで勝ち進んだ彼らは、自分たちの勝利を信じて疑わない様子だった。南米選手にありがちな、そうした驕慢(きょうまん)を私はよく知っている。そして彼らはピッチでその代償を支払うことになった。サッカーとはそういう風にできている。相手を見下せば、必ず手痛いしっぺ返しにあうのだ。

オシムが語るコロンビア戦。「日本は相手の退場で勝ったのではない」|サッカー代表|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

サッカー界随一の賢人(だと自分は思ってます)オシムさんのインタビュー。コロンビアに驕りがあったかどうかは自分には判断できませんが、少なくとも必死になって走っていたのは日本に思えました。

 

最後に

こうして見てくると、幸運がありつつも、日本選手の実力と監督の采配で勝利をもぎ取ったというのがよく分かります。がぜん楽しみになってきたW杯。是が非でも決勝トーナメント進出して一日でも長くぼくらを楽しませてほしいです。

 

※一次リーグでの日本の戦いに関する記事のまとめです。

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