蓮はまことに妙なる花。
そうだ 蓮、見に行こう。
7月半ばの3連休初日。NHKを見ていたら鎌倉の大船で「蓮が見ごろを迎えた」のニュースが。休日のアクティビティとして蓮を見に行くのはいいかも!と直感的に思いました。
というのも自分は割と美術が好きでちょいちょい展覧会に行くんですが、絵画等のモチーフとしてよく蓮って取り上げられるんですよね。仏教美術では特に。
例えば仏さまは”蓮台”と言われる蓮の花をかたどった台の上に座していらっしゃたりします。こんなふうに美術ではよく目にする蓮なんですが、肝心の本物ってよくよく考えたらロクに見たことないぞ、と。それで「海の日」を利用して行ってみることにしました。
蓮の”水シャワーがお出迎え”
蓮は午前中に咲く、とニュースで言っていたので、東京を朝8時の湘南新宿ラインで出発し、現地に着いたのは9時過ぎくらい。
「大船なのにどうして日比谷?」と思ったんですが、ネーミングライツで「日比谷花壇」という花を扱っている会社が命名権を購入したもよう。なお運営も県から日比谷花壇ほか民間の会社に委託されているらしいです。それにしても大船まで来たのに日比谷というのに若干の違和感もあるな。
ゲートをくぐると「なんだこれ!?」とびっくり。蓮の葉から水が滴になって空中にまき散らされていました。
茎の下部のホースがつながれていて、水が吸い上げられ、葉先から散布されています。「蓮にこんな使い方があったとは…」と感心。水がふりかかると涼しかったです。見た目にも涼やかです。
蓮はゴージャスな花
園内を進むと、蓮、咲いてました。まずこういった鉢植えのものがあります。
目を引いたのはこちらの大ぶりの蓮の花。
「花雲淡紅(かうんうすべに)」という品種らしい。名前自体がそのまま日本画のタイトルみたいに華やかです。実際に花を眼前に置くと、夏の日差しに白が鮮やかに映え、花自体も贅沢さを感じさせるほどのヴォリューム感がありました。「蓮ってこんなに美しかったのか…」という印象。古代から人の心をとらえ続けてきた理由がよく分かる気がしました。
もう一つ、ご紹介。
「玉鸞(ぎょくらん)」。鸞は鳳凰のことのようです。蓮の名前は古風な美しさや威厳を感じさせるものが多いですね。先ほどの「花雲淡紅」より少し紅は濃い。
園内の説明書きによると、このフラワーセンターだけで50種もの品種が展示されているとか。だいたい蓮にこんなにも品種があることも知らなかった。
蓮の花の寿命は短い
大きな池に植えられている蓮もありました。
一見、畑にようにも見えますが、全ての葉、花が池の泥の中から伸びています。
この場所では咲いている蓮がちらほらでした。
実は蓮の花の寿命はとても短いらしいです。園内にあった蓮の説明を引いておきます。
一般に「はす」の花は早朝の午前5時30分頃に開き始めますが、開花2日目までは昼頃には閉じてしまい、翌日の早朝に再び花を開きます。そして3日目はあまり閉じず、4日目には散ってしまいます。
花の寿命ってたった4日なんですね。その命の短さ、はかなさも観る人に何かを想わせてきたのか。
蓮がもたらず豊穣なイメージ
昔の人は蓮からいろんな豊かなイメージを引き出していたようです。ふたたび園内の説明を引いておきます。
泥土の中から生まれても清純可憐な花を咲かせる「はす」はインドでは聖者の花、中国では君子の花と言われ、極楽浄土の花として仏教思想を代表するものです。
蓮が咲いてる現場に行ってみるとよく分かりますが、その美しくピュアな花とその根にあるいわゆる泥土のコントラストは相当なものです。だから俗世=泥土にあっても美しい花を咲かせたとして、仏教のありがたい教えが蓮の花にたとえられてきた。例えば法華経(妙法蓮華教)なんて、お経の名前に蓮が入っています。「花を旅する」という本の一節から引用します。
誰でも成仏ができるということで、大乗仏典として法華経が世界に広まります。法華経とは妙法蓮華経です。ふつうに南無妙法蓮華経といわれますが、南無(ナーム)は帰命(うやまい信じてしたがう)、妙は妙なるもの、花も実もある仏法の真実、蓮華は蓮も花、一言でいえば蓮そのものということです。蓮華のお経です。
法華経ってその教えの素晴らしさを蓮のイメージを借りて訴えているんですね。それほどまでに仏教と蓮の結びつきは強い。仏像の光背にも蓮は使われていますし。
その他にも「花を旅する」によれば、
- 葉が水をはじく=とらわれることがない
- 蓮根からでも種子からでも繁殖する力がある=生命力のエネルギー
- 蕾と花=男性的シンボルでもあり女性的シンボルでもある
など蓮は様々に人間のイマジネーションを刺激してきたようです。確かに蓮の葉の水玉など相当美しい。いろんな芸術作品に使われるのも納得です。
蓮=東洋、水蓮=西洋?
フラワーセンターには水蓮の池もあります。
蓮ははす科。水蓮はすいれん科。同じ水生植物でも酒類は違います。また蓮は東洋を感じさせる花なのに対して、水蓮が西洋っぽいな、と思うのはやはり印象派のモネが大々的に絵画の題材にしたからだろうか。水蓮の花は蓮の花ほど大輪&ゴージャスではなく、ちょっと可憐な感じ。言うなれば色気を放つ大人の女性とまだ初々しさを感じる少女との対比みたいなものかも。
最後に
日比谷花壇大船フラワーセンターですが、今回は蓮をメインに記事にしましたが、中にはバラ園もあり、温室もありとなかなか楽しめるつくりになっています。水蓮見た後にバラ園見たら「これ、モネの世界やん!」とちょっと思いました。
入園料も400円と手ごろ。また花に触れたくなったら行ってみようと思います。
※蓮のお経=法華経がどのように誕生したのか。わかりやすく解説していた番組を記事にしました。