歴史探偵

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「剣璽等承継の儀」の“剣璽等”って何だ?

天皇の地位を表す象徴。

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NHKニュースの解説が良かった!

新天皇がその地位につかれるための儀式、「剣璽等承継の儀」。そこで受け継がれる”剣璽等”って何のことなんでしょう。

その儀式の中継の後の、NHKニュースの解説が非常に簡潔で、分かりやすかったので、ここに書き起こしをアップしておきます。

 

出演者

  • 久禮旦雄(くれ・あさお)…京都産業大学准教授。皇室の歴史や宮中の儀式に詳しい。
  • 和久田麻由子(NHKアナウンサー)

 

剣と璽は「三種の神器」

和久田:では、先ほど行われました「剣璽等承継の儀」について、改めて久禮さんにうかがっていきます。久禮さん、「剣璽等承継の儀」の剣、璽がそれぞれ、剣と曲玉に当たるわけですね。

久禮:そうですね。こちらが剣で、こちらが璽ということになっておりまして、これはいわゆる「三種の神器」と言われるもののうち、鏡は宮中の賢所(かしこどころ)にいつもございますので、この二つ、剣と曲玉が、普段は「剣璽の間」に置かれておりまして、これは皇室経済法においてですね、「皇位ともに伝わるべき由緒あるもの」というふうになっているものの、一部でございまして、皇室に伝わり、長く皇位の象徴とされてきたものということになっております。

 

剣璽等の”等”には何が含まれる?

和久田:そして、剣璽等の“等”には何が含まれるんでしょうか。

久禮:そうですね。これには様々なことものが含まれておりまして、代表的なものが、例えば、皇太子に伝えられる壺切御剣(つぼきりのぎょけん)というもの、皇太子の地位を象徴するものですけれども、そのほか、東山御文庫に伝わります歴代天皇のご宸翰、ご宸筆といったようなものもそうですし、ほかにも宮中の「宮中三殿」という一種の神社のような建物ですけれども、そのもの自体も、この「剣璽等承継の儀」の中で、いずれも皇室経済法にあります「皇位ともに継承されるべき由緒あるもの」の中に含まれている、ということになります。

和久田:そして、国璽と御璽も含まれる?

久禮:国璽と御璽がその代表的なもの、ということになります。

和久田:今日はですね、あの、模型を用意したんです。

(模型がスタッフによって運ばれてくる)

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和久田:過去の映像や取材の情報を基に、おおよその形を再現したものです。およそ9センチ四方で、高さはおよそ8.5センチだそうです。この御璽が法律や政令へ押印されるもの?

久禮:そうですね。2.8キロですから、ま、これはレプリカですから、軽いですけれども、ほんとは純金製ということでかなりズッシリと重いものということになっております。

 

御璽が”内乱のきっかけ”になることも

和久田:この印をめぐっては、歴史上どんな事が起きていたんでしょうか?

久禮:そうですね。天皇御璽(てんのうぎょじ)というものの始まりはですね、これは8世紀に律令が制定される、つまり日本に体系的な成文法典ができたときに始まります。いわば、文書行政が始まりますと、それを最高決定者として天皇が判子を押す、という必要が出てまいりますので、公式令(くしきりょう)という法律に、この形が整備される、ということになります。当時は銅製品、銅の印であったというふうに言われております。

で、奈良時代などにはですね、いわば内乱が起こりますと、この判子をめぐって政治闘争が起こる、といいますか、この判子を手に入れたものが国家の軍隊を動員できるということで、実際に内乱の、きっかけがこの判子をめぐってのことだった、ということもしばしばございまして、その後も、何度かどうも作り直されているようなんですね。現在の東大寺に残っております「国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)」には、天皇御璽という判子が500個近く押されている、ということで、実物も残っている、ということです。

和久田:先ほど銅製のものもあったということですが、現在は使われているのは、こちらは模型ですけれども、金製のもの…

久禮:そうですね、これは明治7年にですね、今までのものを作り直しまして、純金製のものを作成するということになりまして、それが明治以降は内大臣府にあったんですが、現在は宮内庁のほうで使われていることになっております。(終)