歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

コンフィデンスマンJP第6話 感想

少し人間の心を平板に扱いすぎてはいないか。

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禁じえない羊頭狗肉感

自分は第4話の感想で、「このドラマは、毎回のエピソードで後半になるに従ってツッコみどころが増えたり、オチが弱かったり…という傾向があるのでは」「でもこのドラマの持つ展開リズムと適切な間隔を置いてちりばめられる笑いがその欠点を補っているので満足しながら見ている」と書いた。つまりはいささか竜頭蛇尾なきらいはあるが、まあそれでも良しとしようということだ。

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で、第6話やっぱりその傾向はあって、後半尻すぼみだったんだけれど、今回はその程度がヒドイというか、あまりにも人の心理の扱いが雑なのでは、と思ってしまった。コンフィデンスマンJPの持ち味であるリズム・笑いをもってしてもちょっと補いきれないマイナス面を感じてしまったのである。

そもそも内村光良演じるアメリカ帰りのコンサルタント・斑井満が、こちら側が感情移入できる魂入った人格として立ち上がっていないように感じられた。前半はほとんど斑井のセリフはないし。またこの人物にお笑い界トップクラスのウッチャンを当てること自体、もったいないというか、「ウッチャンじゃなくてもいいじゃん」とも思ってしまった。ウッチャンが演じる必要性があっただろうか。

そして、そもそも体温が感じられる人格として立ち上がっていない人物が、考古学マニアたちの「探し求める行為そのものへの情熱」に打たれて、おカネ一辺倒だった心を入れ替え、ダー子(長澤まさみ)から山を買って遺跡を掘り始めた…と描かれてもぜんぜん共感できなかった。制作者たちもこの筋立てに共感していないんじゃないかなと思えたほどだ。だってウッチャンが小さなスコップで山を掘り始める描写があまりに雑だったから。「あんなふうに遺跡探すわけないやん」みたいな。いや、これは話が逆かもしれない。人物に感情移入していないから、どんな描写をされてもうつろに見えたかもしれない。

いずれにせよ登場人物に感情移入させる必要がないならば、ここまで長いストーリーである必要もなく、もっと短くシャープなコントでいい。なんというか今回のエピソードには羊頭狗肉感を禁じえなかった。

 

リズムの中に埋め込まれたリズム

少し辛らつに書いてしまった…。しかし今回ももちろん魅力的な要素はあった。ダー子が古畑任三郎をパロってみたり、土器作りをさせながら3人にアフロヘアをかぶらせ、レキシの音楽をかけてみたり。土器作りのシーンはレキシファンで良かったな~と思った。あのシーンでは腹を抱えて笑ったので。

 

また、自分はこのドラマの最大のウリはテンポよく物語が展開されるという意味での”リズム”だと思っているが、今回はセリフ回しで気持ちいいリズムが2箇所あった。

一つ目は五十嵐(小手伸也)が斑井のプロフィールを述べるところ。

斑井満。アメリカ帰りの売れっ子コンサル。肩書たくさん名声大好き。地方再生、街おこしが得意分野だ。実に耳ざわりのいいプロジェクトを持ちかけ、タダ同然で土地を買い上げちまう。

もう一つはリチャード(小日向文世)の「富を手に入れた人間が最後に欲しがるのは何かな?」という問いかけに対して、ダー子が答える場面。

名誉よ。賞状勲章ノーベル賞。教科書に顔写真がのって小学生に鼻毛を描かれる名誉。

この太字の部分の韻を踏んでいるところなど実に気持ちいい。それぞれのセリフ全体もリズムよく語られてスルスル情報が頭に入ってくるが、そのさらに下位のレイヤーにも言葉遊びのリズムによる快感が埋め込まれている。脚本家うまい!と思ってしまう。

 

箴言味わい比べ

お決まりの冒頭の箴言は、こうでした。

あのトロイアが、
実際に存在するに違いないという確信が
多事多難な人生の浮き沈みを繰り返す間にも、
決して私を見捨てなかったことは、なんという幸いだったろう
ハインリッヒ・シュリーマン

今回は、劇中にもう一つ箴言めいたものが紹介されていた。斑井の父が著作の中で述べている言葉だ。

考古学は学ぶものでも研究するものでもない。とり憑かれるものだ。

斑井万吉

こっちの箴言の方が汎用性があるような気もする。何かにとり憑かれたい、情熱を傾けたいと思いながら、かなわない人も多いだろうな。自分もその一人だけど。

 

※他の回の感想です。 

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