歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを書きまくろうと思っていたら、仕事柄どうしてもTVの記事が多くなる今日この頃…

コンフィデンスマンJP第4話 感想

リズムに乗ることの気持ちよさ。

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コンフィデンスマンと村上春樹

前回の第3話はコミカルな展開の中に割と深淵な芸術論が語られていて「古沢良太さんて思想的な脚本家なんだな 」と思ったりもしたが、今回は書き留めておいて自分の糧にしたいような哲学は語られず、かといってつまらないわけでもなかった。いや、とっても面白かった。

で、どうして面白いのかと考えてみるに、このドラマは”シーンの展開”が抜群のリズムを持っているからではないか、と思った。そう、リズムがもたらす気持ちよさである。

番組冒頭、長澤まさみの朗読が終わって、わずか1分あまりで、食品偽装について良心の呵責を感じている工場長・宮下(近藤公園)が偽装を命じる社長・俵屋勤(佐野史郎)をいさめるシーンに移り、早くも今回のエピソードの善と悪がはっきり示される(食品偽装を告発しようとする一社員=善と、会社の利益のために偽装を続けようという社長=悪)。しかもその1分の間には、子どもの嘘をとがめる妻のセリフもさりげなく織り込んで、宮下の心の苦しみに重しを加えている。「物語の構造」と「登場人物の感情のありよう」というドラマを味わうための前提条件を、この作者は素早い手つきで視聴者の胸の中にインストールしてしまう。見事だ。

俵屋をだますためにコンフィデンスマン3人が動き始めるところも、偽の郵便物→偽の喫茶店→台本をわざと読ませる→酒でつぶそうとするが何度も失敗する…と目まぐるしく展開して、一切のよどみがない。「深作欣二の指定席」と聞いて飛び跳ねたり「勝新太郎はカツサンドにブランデーをかけて食べていた」と聞くや同じ食べ方を試してみたりと、映画マニアっぷりからくる笑いもテンポよく織り交ぜて飽きさせない。とにかくリズムがいいのだ。

このドラマが何を語ろうとしているか、というよりもその語り口そのもののリズムが心地よいというのは、自分は村上春樹のエッセイにも通じると思う(そんなことを言うと村上ファンは怒るか?)、彼の身辺雑記のエッセイもそこに込められたメッセージを深く味わうというよりも、目で読む文章がスムーズに脳で変換され、前へ前へ進んでいく行為そのものが極上の楽しみみたいなところがある。だから仕事でものすごく疲れて小難しい文章など読みたくない時も、村上春樹のエッセイならば逆に頭のマッサージのように凝りをほぐしてくれて気持ちよい。

コンフィデンスマンもそういうリズムの心地よさが周到に計算されているところが強みなのではと第4話にして思うようになった。

 

長澤まさみと吉本新喜劇

今回も輝いていた長澤まさみ。長澤まさみにハマってしまって雑誌ケトルまで買ってしまった。

ケトルVOL.42

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この中でライターの清水健朗さんがおっしゃっていることが我が意を得たりであった。少し引用させていただきます。

彼女が魅力を発揮するのは、女優として雑に扱われているときです。 

特に「真田丸」での演技は印象的です。彼女は、このドラマでヒロインらしからぬ扱われ方をされながら、最終的には主人公を食わんばかりの存在となります。

実は自分も「長澤まさみ、いいかも…」と思い始めたのは「真田丸」からだった。

三谷さんの脚本の力ももちろんあったろうが、主人公の堺雅人にコミカルに愛を迫る長澤まさみには妙に惹かれ「なんでだろう?」と思っていた疑問がこの清水さんの文章を読んで解決した。

10年ほど前「ラストフレンズ」というドラマがあってちゃんと全回きちんと追っかけて見ていたけれど、上野樹里の巧み演技ばかりに目がいっていた。長澤まさみはDV受ける薄幸そうな美少女の役だったが、正直心の中には分け入ってこなかった。それは彼女が全然三枚目じゃなかったからなんだな。いわゆるきれいな女優さんという役柄では長澤まさみのポテンシャルは発揮されないのだ。

今回、長澤まさみは鼻脇に大きなほくろをつけて、ヘンなアクセントでしゃべる喫茶店の女主人、中国人美人女優、くノ一そしてダー子本人。どれも笑いの中にそれぞれを演じ分けてて魅力的だった。ダー子(長澤まさみ)が次のシーンをどういうオンナになって出てくるのか楽しみで、吉本新喜劇のギャグを今か今かと待っているときの気分に似ていると思ってしまった。これだけの期待感を醸成できるダー子というキャラクターはコンフィデンスマンの大きな達成だ。

ちなみに今回、自分にとって最高のダー子だったのは、ハニートラップを成功させて、狂声を発しつつボクちゃん(東出昌大)に得意満面に迫るところ。

ダー子:うおっしゃーー!イエイ!イエ~!どうだ、見たか、ボクちゃん!誰がハニートラップの才能ないって?!

ボクちゃん:わかった、わかった。

ダー子:目線一発だぞ、目線一発で落としたぞ。ダー子さんの弱点なんてないんじゃボケ~~~!

いや~いいです、このシーン。最後なんて目ん玉ひんむいて顔ふるわしてました。一線級の女優なのに。こういうの見てると「惚れてまうやろ~」くらい好き。

 

竜頭蛇尾?それでもいいじゃないか

コンフィデンスマンの傾向として、毎回ツカミは面白くテンポよく、滑り出しは順調。

そういえば今回の冒頭の開幕宣言はダー子によるもので、カーテン裏に隠れたダー子がマリリン・モンローに変身して出てきた。マリリンに似せたメイク、動くカメラワーク、チェンジする照明など映像演出もクール。たたみかけるドラミングも気持ちいい。このパートの演出が好きなので、セリフを引用しておくと…

マリリン・モンローは本当に自殺だったのか。UFO映像はフィクションなのか。ハリウッド映画は人類を洗脳したのか。コンフィデンスマンの世界へようこそ。

やっぱりこのパートはボクちゃんじゃない方がいい。

それはさておき、このドラマ、後半になるに従って、ツッコみどころが増えたり、オチが弱かったり、という傾向がある気がする。今回も「あれ?俵屋って女好きじゃなかったの?それなのにボクちゃんを誘うの?」とか「試写会でオカシな作品見せられたら、隣に座っている制作者たちを見るだろ。なんで抜け出せてるんだ?」などいろいろ難癖をつけ出したらキリがない。

でもこのドラマはそれでいいんだろうな…。上述したように、内容よりもリズム重視。気持ちよい展開を見せてくれたらこちらとしては満足だ。前回はその気持ちよさの中にに「芸術とは何か」という哲学的な主題を滑り込ませてきたので、アタマ一つ抜けたクオリティではあったけれど。

次回もめくるめく展開を期待します!

 

補足:冒頭の箴言

白い部屋でダー子が名言を読むコーナー、今回は…

映画とは、国と国の垣根をなくすこと。映画とは、世界の言葉を持っていること。

映画とは、みんなが見るもの。映画とは、人間を知ること。

淀川長治

でした。内容とのシンクロ感はそんなにない回でしたね。