歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

コンフィデンスマンJP第1・2話 感想

長澤まさみは次にどんな顔を見せてくれる?

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脚本は”あの”「リーガルハイ」の古沢良太さん

リーガルハイと言うドラマがすごく好きだった。
主役は悪ふざけ弁護士の古美門研介(堺雅人)と駆けだし弁護士の黛真知子(新垣結衣)。物語の冒頭ではいつも「世の倫理にもとることを平気で言い、カネ大好きとうそぶく古美門先生の主張」と「そんな先生を青臭く非難する黛先生の主張」が激しくぶつかる。最初は見てるこちらも「そりゃ黛先生の言うことが正しいな」と思うのだが、お話が進むうちに「あれあれあれ、古美門先生の言うことの方が説得的だぞ」と思い始め、最後には古美門先生の言うことにきっちり納得してしまう…。その感情の"ひっくり返り感"がたまらなく気持ちよく思いっきりハマっていた。
セリフはどこまでも小気味よく、セリフやキャラを生かした演出もキレキレであった。

 

ん〜正直、物足りなかった第1話

さてそのリーガルハイの脚本を書いた古沢良太さんが手がけるのが「コンフィデンスマンJP」。低迷が伝えられるフジテレビも番宣に相当力を入れているように見受けられた。期待しつつ第1話を迎えた。

第1話観了直後の感想は「うん、面白い…。面白いけど、何かが足りないなあ…」。
確かに幾重にも仕掛けられたドンデン返しは気持ちいい。物語の前半から「これはいったい本当の事態なのか(例えばリチャード(小日向文世)が実際に大怪我してるのかどうなんだ?)」といったような、こちらの感情の宙吊り感(この先どうなるか分からない感)がずっと続き、画面に引き寄せられる。その宙吊り感がストンと着地したカタルシスを得たいから、途中でドラマを見止めるわけにはいかない。テンポもよい。

しかしその分、どうやって話の流れをドンデン返しするか、どうやって視聴者を"アッ"と言わせるかに制作者の意図がフォーカスされ過ぎていて、その下心がぷんぷん臭うって少し覚めてしまうところもあるのだ(番宣で「あなたは今度も騙される」と宣言しているわけだから、その下心がミエミエでもしょうがないんだけれど)。

あと3人が詐欺をしている動機づけがほとんど語られないので登場人物に感情移入するのは難しい。
展開の疾(はや)さの気持ち良さ(例えば冒頭から、説明らしい説明はないのにホストクラブ→カジノ→賭場と場面は目まぐるしく変わり、女同士の現金の奪い合い、日本刀の大立ち回りと飽きさせない。これは見事)、コメディのおかしみ(国税局査察部の発音の”しにくさ”に目をつけたのはさすが!)以外には味わえる感情が乏しく、それが物足りなさに通じている。
第1話の最後では、辛うじて団子屋の夫婦のカタキを取ってあげたという、石川五右衛門的ダー子(長澤まさみ)の動機がほのめかされてはいたけれども。

この3人の詐欺を行う背景は今後語られることになるのだろうか。それともそういうヒューマン的要素こそこのドラマを凡百な作品に堕としてしまうものとして忌避されるのだろうか。今後の展開を待ちたいと思う。

 

第2話、初回よりは面白かった!その理由は…

第1話同様ツカミは抜群。DESIRE時代の中森明菜か、と見紛うようなボブヘアのダー子が怪しげなロシア人を雑居ビル内の寿司店に案内する。リチャードとボクちゃん(東出昌大)はカウンター内でせっせと「エア握り」の作業中。クスクス笑いながら見ていると、ビルの管理人らしき男が出てきて猿芝居は突然終了。アメリカン・ショータイムふうの音楽にのって軽いチェイスシーンが繰り広げられる。そしてダー子が歩きながらカメラに向かって、今回のショーの幕開けを宣言する。

ダー子:目に見えるものが真実とは限らない。グルメサイトの星の数は信用できるのか。温泉の効能は根拠があるのか。ゲレンデで出会った彼女と目の前にいる彼女は本当に同一人物なのか。コンフィデンスマンの世界へようこそ!アッハッハッハ!

このセリフのフレーズ、言い回しのキレの良さ、カメラ目線の演出がいい。シメのダー子の挑発的な哄笑が最高。長澤まさみがちゃんと役を演じきってる。

本編に入ってからもそれなりに楽しめた。それは多分彼らが詐欺を働くのがリゾート・ホテル(旅館)業界というカタギのビジネスであり、視聴者も実感を持って理解できる業種だったからではないか。第1話の江口洋介演じるジャパニーズ・マフィアの世界は正直よく分からないし、話を作るためだけのキャラ設定だった気がする。

一方第2話の変革期にあるホテル・旅館という話はインバウンド旅行客隆盛の昨今、よく理解できる話だし、現在の老舗旅館(の一部の)リアルを捉えている。作者はインターン生に扮するダー子の以下のように言わせている。

ダー子:我が国の老舗旅館とやらに泊まると絶望的な気持ちになります。伝統にあぐらをかき、夕食は何時にこれを食え、風呂は何時から何時までに入れ。一人よがりなサービスを押しつけ、着物で三つ指つけばおもてなしだと思っている。潰れて当然です。

まるで日本の観光業界に厳しくも建設的な注文をつけるデービッド・アトキンソン氏(金融アナリスト、美術工芸会社経営)の本の一節のようだ。一般の人が老舗旅館に抱くイメージを見事に反転させる古沢さんの手法はリーガルハイから一貫している。「世の中のいい話は本当か?よく現場を観察し、思考したら本当はいい話ではないのでは?」と視聴者に気づきを与える言説である。

※デービット・アトキンソン氏の著書

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

 

3人の詐欺師という設定はぶっ飛んでるとはいえ、ドラマの舞台はやはりリアルな現実に立脚している方が没入できる。

とはいえ、もう少し人情味のある「グッとくる」とか「しみじみする」とかの感情にも浸りたいですが…。

 

長澤まさみを心待ちにしている自分がいる

今回のドラマの自分の最大の収穫はハッキリしていて「長澤まさみがいい! 」です。上記の番組冒頭のシーンもキマっているし、 ボクちゃんをからかうS目線もいい。「(桜田の)側近になんてそう簡単になれるの?」と聞くボクちゃんに対して

わたしを誰だと思ってるの。ダー子さんよっ!

と最後の”よ”にアクセントをつけて言い放つ言い回しもいいし(これは演出陣からのオーダー?)、極めつけは、日本にカジノをつくる是非についてボクちゃんと言い争った際

日本は昔からギャンブル大国なの!ナー!!

と狂ったように叫んだところが最高だった。なんなんだ、その「ナー!!」の大声は…と思ったが、その意味不明なことを言うこと自体がダー子というキャラをしっかりと表現しているんだよなあ。そしてそれを自分のものにして演じる長澤まさみもすごい。

今から桜田社長をサギで引っ掛けてやろうとダー子、とリチャードが見栄を切るシーンがあって

ダー子:どうせなら1.5億と言わず、2億、3億、ど〜んといただきやしょい!

リチャード:あいよ!

こんなふうに二人並んでポーズをキメているのだが、二人に寄っていくカメラが焦点を合わせているのはダー子の顔だけ。リチャードの方は画面からはみ出てピントもボケている。この画を見てやはりこのドラマはダー子=長澤まさみのためのドラマなんじゃないかと思った。

リーガルハイの古美門先生も役者としての堺雅人の魅力を何倍も押し上げた最高のキャラクターだと思うけれど、ダー子も長澤まさみにとって同じ作用を及ぼすのではないだろうか。

というわけで来週も長澤まさみを一番の楽しみに見ます! 

 

※第3話の感想はこちら。

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