歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

ドラマ「隣の家族は青く見える」・最終話の感想

心に深く刺さったセリフがあった。

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人間って、人生って難しい。

誰だって幸せになりたいと思って生きている。そうやって自分の生き方を決めている。しかしそういう生き方を選んだがゆえに「本末転倒」してしまい、逆に不幸になっていまうことがままある。

小宮山家の父・真一郎(野間口徹)は妻・深雪(真飛聖)を前に「本末転倒」を口にした。

真一郎:商社を辞めたのは、家族と過ごす時間を持ちたかったからなのに、好きな仕事につけても家族がバラバラになってしまったら、本末転倒だよ。

一旦は離婚寸前までいった真一郎と深雪。真一郎が商社を辞めずに淡々と日常を過ごしていれば、この危機は起きなかった。一方で、鬱々とした思いで勤めを続けていれば別の形の危機が訪れていたかもしれないが。

 

子どもを持つ幸せを求めて不妊治療に突入した大器(松山ケンイチ)と奈々(深田恭子)の夫婦もひどい「本末転倒」になりかけた。より幸せになろうとは考えず、このままの生活でいいと思っていれば、奈々が傷ついて大器のもとを(一時的に)去る必要はなかった。

 

その奈々に向かって、 大器の母・聡子(高畑淳子)が告げたセリフが今回は深く心に刺さった。

聡子:(大器にも)辛い思いさせればいいんじゃないの。

思わずハッとした。そうか…そうだよな…と。

この一連のセリフがとてつもなくジーンと響いたので、少し長くなるが引用させていただく。

聡子:妻が辛い思いしている時は、夫も一緒に辛い思いするべきでしょ。

嬉しいことや楽しいことは誰とでも共有できるけど、辛いことや悲しいことは…一番大事な相手としか共有できないんじゃないの。

辛くっても悲しくっても、悩んでも苦しんでも、二人で…一緒に生きていこうって約束したのが夫婦なんじゃないの。それが結婚ってもんなんじゃないの。

奈々は、大器に子どもを抱かせてあげたいと不妊治療に励んできた。でもその希望はついえてしまった…。希望がついえた中、二人で生活していくのは、大器に辛い思いをさせてしまう。大器に辛い思いをさせるのはイヤだ。辛い思いをさせるくらいなら別れよう…。

奈々は伊豆の実家に引っ込んでしまう。そんな奈々に聡子はきっぱりと断言するのだ。夫婦や家族の間では楽しい時間だけを共有するってわけにはいかない。そんなイイトコどりできるような関係は夫婦や家族とは言わないのだ、と

しかしここには言外の意味が含まれている。そういう「辛いことや悲しいこと」を共有する間柄だからこそ、それを乗り越えた夫婦や家族は、以前よりも強い絆で結ばれることになる、ということ。

事実、伊豆から戻った奈々と大器が抱き合い、お互いの存在のかけがえのなさを確かめ合うシーンは、ふつうの恋人同士よりも高次の愛に溢れていて、非常に美しいシーンだった。ドラマの当初から二人は、他のドラマではお目にかかれないくらいの爽やかな関係性を見せてくれたけど、最終話に来てその愛に(ちょっとおおげさだけど)”崇高さ”まで加わった気がする。

 

部屋で奈々は大器に語る。

奈々:赤ちゃんを授かることが奇跡だってと思ってたけど、一生一緒にいたいと思えるパートナーと出会えたことがそもそも奇跡なんだなって。

奈々:大ちゃんと出会えたことが一番の奇跡なんだよ。

このドラマは#5で二つの奇跡について語っていた。「恋愛関係が続く奇跡」そして「赤ちゃんが生まれ、すくすく成長する奇跡」。そして最終話では「夫婦の二人が出会った奇跡」。日常の中で”見過ごされがちな奇跡”に鮮やかに光をあて、最後まで見事なドラマだった。

 

 追記)

このドラマについては書き足しておきたいことが一つ。ドラマの中で一番恋人らしかったのは渉(眞島秀和)と朔(北村匠海)のカップルだった。

試験の合格通知が届いた時

朔:槊合格してないなんて、ひと言も言ってないじゃん。 

と渉に言ってる時の朔の得意そうな顔と言ったら。 男の自分から見てもかわいいと思ってしまう。女子って時々こういう顔をする。

エンド近くで、渉のお菓子を柔らかく拒否したあげく、最後に頬にキスするところも。あれが女子だったら胸キュンもの。二人はこのドラマが創り出した日本のゲイカップルのスタンダードになるかもしれない。

 

※#5、そして#3までの感想はこちらに書いています。

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