歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

丹後・伊勢神宮ゆかりの神社〜籠(この)神社・参拝記〜

 天橋立は"聖地"だった。

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"元伊勢"という言葉を知っていますか?

”元伊勢”とは伊勢神宮の祭神である天照大神と豊受大神(とようけおおかみ)が、伊勢に遷られる前に、お祀りされていた土地、という意味。
その元伊勢の名を冠する神社が、京都府宮津市、あの日本三景の一つとして知られる天橋立のすぐ側にあります。
それが籠神社。
ふるさと京都・舞鶴に帰省した折、新年入ってだいぶ過ぎてましたが、初詣を兼ねて参拝してきました。
 

観光船で海を渡る

天橋立の"根元"にあるのが、京都丹後鉄道の天橋立駅。
籠神社は、そこから阿蘇海という海を隔てて反対側にあります。

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駅の観光案内所で聞いてみると、バスもあるが観光船が便利、とのこと。
おススメに従って船で行くことにしました。
駅から船の乗り場までは徒歩5分強です。

観光船がモーターボートか それが問題だ

乗り場に到着。

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すると、声をかけてくる女性が。
「モーターボートで海を渡りませんか?」と勧誘されました。
なんでも、観光船は往復960円、ボートは1000円で、往復で40円高いけれど、その分、行き帰りの時間は融通が利く、と言います。
迷いましたが、同行してた妻が乗り物酔いしやすいので、今回は遠慮しておきました。
でも、ほんとに弾丸で、対岸に渡って帰って来たい人には便利かもしれません。
 
ということで、改めて隣の観光船乗り場へ。

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こちらが観光船。

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屋上から直接、天橋立の景観をモノにできますが、今の時期は吹きっさらしで寒い…。

日本三景と並走する

こちらが船から見た天橋立。

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ずらーっと松がどこまでも続く屏風のように並んでいます。
こんな景色、他では見られない。さすが、日本で三本の指に入るスポットだけはあります。

天橋立に"神を感じた"古代の人々

これは別の機会に訪問した際、山上にある遊園地(天橋立ビューランド)から見下ろした天橋立です。

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沿岸の地形と潮の流れが作り出した奇跡の造形。
そりゃ昔の人々は「こんな不思議な砂洲、神さまが造られたのに違いない!」と思ったことでしょう。
だから、今から行く籠神社はじめ、天橋立の周りにはパワースポット的寺社仏閣が多くあります(知恩寺、天橋立神社、成相寺など)。
 

”元伊勢”は海からすぐ

12分の短い船旅を終え、船着場から歩いてすぐのところまで来ると、大鳥居が見えてきます。籠(この)神社です。
昔、このお社の祭神である彦火明命(ひこほあかりのみこと)が、竹であった籠船に乗って海神に会いに行かれたことから、この名前がついたとか。

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丹後国随一の社格を誇る

この神社は丹後国一宮(いちのみや)。古代には、丹後国で最高の格式を誇った神社ということです。神社の公式HPから引用しておきます。
「一の宮」とは一種の社格のことで、諸国において由緒ある神社や信仰の篤い神社の序列がおのずから生じ、その最高位に列するものが「一の宮」となりました。一方、「総社」とは国内の諸社祭神をすべてお祀りしたお社で国司が奉祭する神社を云います。当社は奈良朝以後、丹後国一宮に列し、同国の総社を兼ねました。 
またこの説明になるように丹後国の「総社」としても位置づけられていました。ここに丹後国内の祭神全てを祀っていた、ということです。いかにこの地域で、尊崇を集めていた神社なのか、ということがわかります。

社殿も確かに”伊勢っぽい”

参道を進みます。社殿が見えてきました。

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確かに伊勢神宮に似ている。「神明造り」と言って神社でも最古の建築様式だそうです。

屋根も、よく寺社で見られるような”反り”がないですよね。あの反りは中国から仏教寺院建築の様式が入ってきて以降のもの。なので、日本古来の神社建築では、屋根はまっすぐです。

ここから先の境内は撮影禁止でしたので、テキストだけのレポートです。

五色の座玉(すえたま)は見逃すな!

拝殿まで来てお祈りした際、見逃せないのが、本殿に据えられている「五色の座玉」。これは伊勢神宮と籠神社にしか見られないもの。伊勢とこの神社との、強いつながりを示すものです。

伊勢神宮の神様は4年間この地にいらっしゃった

ここで改めてこの神社の由緒を。公式HP(この神社のHPは非常に充実しています)の記述です。

神代と呼ばれる遠くはるかな昔から奥宮の地眞名井原に匏宮(よさのみや)と申して豊受大神をお祀りして来ました。その御縁故によって第十代崇神天皇の御代に天照大神が倭国笠縫邑からお遷りになり、天照大神と豊受大神を吉佐宮(よさのみや)という宮号でご一緒に四年間お祀り申し上げました。その後天照大神は第十一代垂仁天皇の御代に、又豊受大神は第二十一代雄略天皇の御代にそれぞれ伊勢にお遷りになりました。それに依って当社は伊勢神宮内宮の元宮、更に外宮の元宮という意味で「元伊勢」と呼ばれております。

伊勢神宮の祭神である、天照大神と豊受大神は、伊勢に遷られる前に4年間、この地で祀られていたんですね。丹後の国と当時の朝廷との間に、何かしら深い縁故があったようです。

地方の一神社ながら、ここにいると、遠く伊勢や、古代日本にまで想いを馳せることができて、非常に面白い。

 

カモメの”名人芸”を楽しむ

さて、籠神社を辞して、もう一度海を渡って、帰路につきます。

その観光船の乗り場で見つけたのがなぜか”かっぱえびせん”

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えびせんを観光船の屋上から空中に放ると、ものの見事にカモメがキャッチしてくれます。これが意外と楽しかった。

youtu.be

彼らは一瞬、空中で静止しますからね。手慣れたものです。素晴らしい。

”神を感じる”夕焼け

日没が迫り、空からは黄金色の光の筋が、何本も射していました。

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古代から変わらぬ風景。神様に会って来たせいか、いつもの夕景よりも神さびて見えました。