歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

ドラマ「逃げ恥」のお寺に行ってみた~山梨県甲州市・大善寺 訪問記~

別名「ぶどう寺」。ワイン付きの拝観券がある。

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逃げ恥で胸キュンのシーンがあったお寺

2016年、大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。このドラマの第3話で、みくり(新垣結衣)が平匡さん(星野源)さんに
私は平匡さんが一番好きですけど。
しみじみとしっくり。落ち着いて。
と言って、全国のドラマファンの胸をキュンキュンさせたことがありました。そのロケ場所となったのが、山梨県甲州市にある大善寺。
※お寺にあったポスターです。

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同じ回の中で、平匡さんが大善寺の本堂を
山梨で一番古い建物で大変貴重な国宝だそうです。

と、みくりに案内するセリフもあって、それを聞いたときから「このお寺、一度訪れたいなあ」と思っていました。 

 

勝沼ぶどう郷駅は一見の価値あり

山梨県は美しい土地

道行きは、中央本線の勝沼ぶどう郷駅から。

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電車を降りるとプラットフォームからの景色が見事でした。

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文字通りお盆の底のように広がる甲府盆地のはるか向こうには、銀雪に輝く南アルプス。地形をナマのまま一望できるのはとても気持ちいい。山梨県て美しい土地なんだなあ、と改めて。

”ぶどう郷”の駅というだけはある

駅の通路には、ワイナリーを紹介する案内が。

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一気に”ぶどうの郷”に来た感が高まります。

こちらは「ワンカップ大関か?」と思いきや、ワンカップのワイン。

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駅で買って、電車に乗り込めば、移りゆく甲州の景色を見ながらほろ酔えますね。

 

いざ”ぶどう寺”へ

さて、駅から大善寺まではタクシーを利用しました。5分強、1000円ちょっとで着きます。

山梨には大工集団がいた!

こちらが山門。

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江戸時代の建築で、山梨県身延の大工集団・下山大工の、土橋文蔵茂祇によるものらしいです。

甲州には下山大工なんて大工集団がいたんだ…。知らなかった。

戊辰戦争の舞台にも

またこの山門の面前では戊辰戦争の戦いの一つがあったそうです。

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板垣退助率いる新政府軍と、近藤勇が率いる旧幕府軍(甲陽鎮撫隊と言った)がこの大善寺辺りで戦闘(柏尾の戦い)し、旧幕府軍が敗走しました。こののち、板垣の新政府軍は江戸・板橋まで入り、江戸無血開城へとつながっていきます。

この戦いの前、江戸を経った近藤勇は、自分の出身地である多摩で、酒宴を開くなどして、故郷に錦を飾る風だったらしいです。戦いの前の緊張感がなかった、と。

この辺りの事情を書いた司馬遼太郎の「燃えよ剣」はめちゃくちゃ面白い小説なので、幕末維新に興味のある方は必読です。

滅亡直前の戦国・武田家にもゆかりが

有名な長篠の戦いで、織田・徳川の連合軍に敗れ、家勢も落ち目になる一方だった武田家。織田の甲州征伐によっていよいよ追い詰められ、落ち延びようとした当主・武田勝頼が、宿を求めたのもこの大善寺でした。

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武田勝頼は2016年の大河ドラマで平岳大さんが演じていました。家臣に裏切られた末路がかわいそうでした…。

それにしても、歴史上の大物に縁のあるお寺ですね。

ワイン付きの拝観券!

大善寺の別名は「ぶどう寺」。なんとワイン一杯ついてくる拝観券(800円)というのがあるんです(アルコールがNGの方には、ぶどうジュースや抹茶でも可)。

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ワインをいただくのは本堂にお参りした後で、という説明があったので、まずは参拝することに。

  

本堂は国宝 内部の仏様も見事!

関東一古い建築物

長い石段を登り切ったところにあるのが本堂。

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逃げ恥の平匡さんが解説してくれていたように、建物は国宝です。築730年余り。関東では最も古い建物(1286年)です。京都の市街地で最も古いお寺だって、千本釈迦堂本堂の1227年ですから、同じくらい古いわけです。すごい!

滑らかな流線を描く檜皮葺きの屋根と、横長の安定感あるフォルムが美しい。

ぶどうを持つ薬師如来と個性豊かな仏様

御本尊は薬師如来。ゆえに本堂は別名、薬師堂ともいいます。

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※本堂内部の写真はNGなので、これはパンフレットのもの

手にはぶどうを持ってらっしゃる!これは珍しい。奈良の大仏の造営を指揮したことでも知られる奈良時代の行基が、ぶどうを手に持たれた薬師如来を夢に見て、そのお姿を彫ったとか。

寺伝に行基が出てくること自体、このお寺が相当古いことを示しています。開創以来1300年だとか。昔からこの地に信仰の拠点があったんでしょうね。

薬師仏の左右は日光・月光菩薩像、そして十二神将像が固めています。これらも一見の価値あり。

特に十二神将像は、ユニークなお顔、驚いているお顔、遠くを見はるかしているお顔などあって、個性豊か。ぜひじっくり見てみてください。

 

いかにも”山梨”という景色

本堂近くからの景色も見事でした。

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見えている山に対する説明書きも。

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ぶどう畑とその向こうに見える南アルプスというのは、他県の自分にとっては”いかにも”山梨でしか見られない景色”という気がします。こういう土地で育つというのは、心に美しい風景の記憶を留めることができるという意味で、一つの幸福である気がしました。

 

ぶどう寺のワインをいただく

お寺も一通り巡ったところで、いよいよワインをいただきます。赤ならぶどうはマスカット・ベリーA、白なら甲州。いずれも地元で採れたぶどうです。

この日は甲州の白ワインをいただきました。

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ワインをいただくのもリラックスできる広間。

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ガラス越しに見える庭園(江戸時代)もいい癒しになります。よく「お茶をいただける」というお寺がありますが、それがここではワインというわけです。お代わりも300円で可能。時間が許す限り、ゆっくりできます。

 

最後に

ワインの郷にはぶどう寺。土地の物語としてよく出来ているなあ、と思いました。地元の人にとっては、ぶどうは生活の糧であり、地元の歴史や精神に根づいた”恵み”なんだと実感。歴史好きでも酒好きでも楽しめる大善寺。ぜひ行ってみてください!