超絶インスタ映え展覧会。
- ビジターフレンドリーな展覧会
- 冒頭からテンション上がる仕掛け
- シティビューのガラス面にオリジナル動画が!
- A先生の青春・トキワ荘ゾーン
- 怪物くん、猿、ハットリくんとともに
- どこまでも不気味な"黒藤子"
- "ドーン"はマージャンから
- 藤子不二雄Aワールドは"富山"にも!
- 最後に
ビジターフレンドリーな展覧会
「藤子不二雄A展@六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー」に行ってきました。
先週末、川崎にある藤子・F・不二雄ミュージアムを楽しんだのが呼び水になり、どうせなら藤子・F・不二雄の先生のパートナーだった藤子不二雄A先生(以下、A先生と書きます)についても知っておきたいな、と思ったのが動機。
A先生について多数の漫画原稿等展示してあり、理解が深まるのはもちろんですが、ミュージアム側の、訪れた人に徹底的にサービスしようという姿勢をすごく感じられた展覧会でした。
特に写真撮影。全展示→撮影OKでしたし、展示スペースごとに立っているスタッフさんが、「写真撮りましょうか?」と積極的に声をかけて下さいます。
ミュージアム側としてはSNSの宣伝効果を狙っている、というのはもちろんあると思いますが、スタッフの声掛けだけではなく、要所々々に写真を撮りたくなるようなスポットが用意されていました。ここまで意識的に「写真を撮ってもらおう」と仕掛けをしてくる展覧会は記憶にないなあ。
その分、情報量が薄い…という人がいるかもしれないけれど、それらはA先生自身が語る動画インタビュー(これも複数箇所あります)補っていた気がします。
また単に情報だけなら本買って読んでもいいわけで、今回の展覧会は「実際に来てくれた人に直接体験を楽しんでもらおう」と明確に打ち出してました。この姿勢はぼくはとても"買い"だと思います。
前置きが長くなってしまいました。
以下、どのような展示だったのか、まとめておきます。
冒頭からテンション上がる仕掛け
入場してすぐの「会場エントランス」。ここには「笑ゥせぇるすまん」で度々登場する「BAR 魔の巣 」が。いきなりの原寸大セットの登場にテンションも上がります。
スタッフさんも傍らにいて、写真撮影の労も取ってくれます。
シティビューのガラス面にオリジナル動画が!
またガラスには10分に一度、「笑ゥせぇるすまんまん」の動画が映し出されます。これは日没後だけの上映なので、見てみたい人は、日が暮れてから行かれた方がいいです。
あと、A先生のややブラックな世界観(A先生は藤子不二雄のうち、"黒藤子"と呼ばれているらしいです)には、夜の鑑賞の方が合っている気がする。
六本木ヒルズの展望台が会場なだけあって、東京の夜景も抜群です。
A先生の青春・トキワ荘ゾーン
続いてはトキワ荘ゾーン。先生が東京でプロの漫画家として描き始めたころの展示が並びます。
壁には下のようにディスプレイがあって、先生自ら自分の来し方を語ってらっしゃいました。
このインタビューの動画、スペースごとに何ヶ所か設えられているんですが、実にいいです。内容がコンパクト(5分くらい?)にまとまっていて、これを見ているだけで、A先生の歴史、先生がどんな思いで漫画を生み出していったのかなど、非常に理解が深まります。他の展覧会でも真似してほしいくらいでした。
トキワ荘には赤塚不二夫、石ノ森章太郎など戦後日本を代表する、名だたる漫画家がいたのですが、「みんな兄弟のようだった」らしいです。あれだけの才能が集まっていて、さらに皆が仲良かったって、それこそ漫画のような奇跡に思えます。
怪物くん、猿、ハットリくんとともに
続いては、A先生の少年漫画の代表作「忍者ハットリくん」「怪物くん」「プロゴルファー猿」がフィーチャーされている"ポップゾーン"。
先生自らが語る作品論
動画インタビューで先生が語っていて面白かったところを挙げておきます。
普通の家庭に、異世界から変わったキャラがやって来る。オバケがやって来たのが「オバケのQ太郎」で、忍者がやって来たのが「忍者ハットリくん」。両作品は設定がよく似ている。
異世界から変わったキャラがやって来る、というのは藤子不二雄の少年漫画作品によく見られますね。あのドラえもんだってそうだ。
怪物くんは締切ギリギリで、あの顔がクルクル変わるアイデアを思いついた。”怪物”とはモンスターで怖いものだけど、”くん”を付けると不思議と親しみやすくなった。
A先生の語り口は魅力的で、怪物くんの顔のアイデアに苦しんでらしたことも、実に飄々と話してらっしゃいます。動画インタビューって語り口まで伝えられるのがいいですね。
プロゴルファー猿は、少年誌にゴルフなんて合わない、と編集から反対されたけど、猿がゴルフで賞金を稼ぐアイデアをつけ加えたらOKになった。当時、子どもたちがお年玉を貯金している、というニュースがあり、賞金のアイデアはそこから思いついた。
先生の、世間に対するアンテナの感度が優れていたことがよく分かる話。自分のやりたいこと(この場合だとゴルフ漫画)を編集者のニーズに合わせる柔軟さも持ち合わせてらっしゃいました。
あなたも"猿"になれる
もちろん、ここポップゾーンでもインスタへの備えはバッチリ。
このコーナーでは、猿の木彫りのクラブを握ることが出来ました。
どこまでも不気味な"黒藤子"
ブラックユーモア漫画の代名詞とも言うべき「笑ゥせぇるすまん」を生み出したA先生。先生にはこれ以外にも、不気味で、人の恐怖感情を突いてくる作品がたくさんあります(といっても、ぼくはそれらの作品をほとんど知りませんでしたが)。
そういういささかブラックな作品が一挙集められているのが、「ブラックユーモアゾーン」。
先生自身、もともとそういった単なる推理でも恐怖でもない"奇妙な味"のする小説が好きだったそう。そういう作品を書く作家としてロアルド・ダールやスタンリイ・エリンといった名前を挙げておられました。
A先生曰く「こういう作品を描くようになったのも、自分が成長して少年漫画が描けなくなったから。"奇妙な味"のする漫画は誰も描いていないから、自分で描いてやろうと思った」のだとか。
逆に藤子・F・不二雄先生は、50歳になっても60歳になっても「ドラえもん」のような少年漫画が描けたらしいです。
スランプ(=漫画が今までのように描けない等)に陥ったとき、自分の強み、趣向などを分析し直し次の一手を見つける、というのは、先生のようなクリエイターでなくても大事な行動指針なのかな、と思います。やはり人間、向かないことは長続きしないですよね。自分が努力し続けられる領域を見つけることが肝要なんだろうな、と先生の生き方を見ていて思いました。
"ドーン"はマージャンから
続いての「笑ゥせぇるすまんゾーン」。壁面に描かれた漫画、1作品分を丸々読むことができます。
当作品の主人公・喪黒福造の決めゼリフである"ドーン"は先生の遊び仲間の方がマージャンで、牌がととのったときに吐いていた言葉だそうです。それを「どこかで使える!」とネタとして頭にメモリーしておき、この漫画を描き始めるときに使ったのだとか。
使えるアイデアはちゃんとキープしておく。この辺りも、我々凡人でもマネすれば良さそうな習慣です。
藤子不二雄Aワールドは"富山"にも!
展示の終盤では、A先生の故郷である富山に関する展示も。
先生のご実家である氷見市の光禅寺には、A先生の生み出したキャラクターの像が。
またJR氷見線・城端線では忍者ハットリくん列車が走っているそうです。
子どもとか間違いなく喜びそう。でもそのためには、今の子どもたちにハットリくんや怪物くんを"仕込む"ことから始めないといけませんが。
最後に
藤子不二雄A先生の世界観が、インスタ写真を撮りながら楽しんで学べる展覧会。開館も22時までと、余裕を持って遊べます。六本木界隈のアトラクションとして、ぜひ行ってみてください。