子ども向けの展示だが、大人こそ行くべき!
キホンの”キ”を分かりたい!
東京から京都・舞鶴への帰省の折、京都国立博物館で開催中の特集展示「謎とき美術!最初の一歩」に行ってきました。どんな展示なのか、フライヤーの文章を引くと…
お寺の襖に描かれた龍や虎、着物にデザインされた松竹梅など、京都の街なかでもよく見かける、あの生き物や植物には、どんな意味が込められているのでしょう。お子さまや海外からお越しの方など、初めて日本美術にふれる方にお薦めの展示です。謎解きをしながら、美術を楽しんでみましょう
要するに美術ビギナー向けの展示ということなんですが、自分のようにそれなりに美術展に行ってる人間でも相当面白かったです。日本美術史などを勉強すると、例えば狩野派の系図なんかに詳しくなったり…ということはあるかもしれませんが、意外と「龍と虎はなぜ一緒に描かれがちなの?」みたいな素朴なギモンをなおざりにしていたりしませんか(自分はそうです)。そんな、言われてみれば気になるけど、ふだんあまり注目しないなあ、という"なぜ?"をこの展示では取り上げてくれています。
この記事では展示で「へえ〜」と思ったものを紹介しておきます。
※なお、特集展示ですので特別料金が発生する企画展示と違い、常設展料金の520円で入場できます。そこもオイシイですね。
※写真は京都国立博物館だより(二〇一八年七・八・九月号)より接写しました。
「松・竹・梅」はなぜセット?
松も竹も梅も寒い冬でも葉をしげらし、また梅などは寒い中でも花を咲かせます。その姿が中国では「困難に負けない理想の生き方」を表すとされました。
「松・竹・梅」がめでたいものに
「松・竹・梅」の組み合わせが日本に伝わると「めでたいもの」と思われるようになりました。不老不死の薬があるとされる蓬莱山(ほうらいさん)の伝説と混じり、めでたい文様と考えられるようになったそうです。
以前、見た「クール・ジャパン」というNHK・ BS1の番組の中では荒俣宏さんが「竹は生長が早いのでめでたい植物とされている」ともおっしゃっていました。きっとそのような意味もあるのでしょうね。
「松・竹・梅」と「鶴・亀」を結ぶ蓬莱山
蓬莱山には不老不死の薬があって、その島には松や竹が生え、鶴や亀が遊んでいるとされました。この伝説が日本に伝わると、そこに梅が加わり「松・竹・梅」と「鶴・亀」の組合せで「蓬莱山」や「不老長寿」を象徴するようになりました。
蓬莱山の伝説って日本人に相当影響を与えていますね。
「獅子」と「牡丹」はなぜセット?
獅子はライオンを元に考え出された想像上の動物。で、獅子と牡丹が組み合わされている理由については諸説あり、だそうです。ただし日本では「平和な世の中を祝って、牡丹のそばで獅子が舞い踊る」という能や歌舞伎が流行り、その組合せを多くの人が知っていたそうです。
「龍」と「虎」はなぜセット?
龍は天を自由に駆け、雨や雲をあやつる伝説上の生き物。虎は中国・朝鮮半島では山の神とされ、虎がうなると風が起こるとも言われました。そのため龍と虎は天と地を代表する生き物として、よく一緒に描かれたそうです。
最後に
一部屋だけのこじんまりした展示でしたが、自分の知らない日本美術のツボを正確に押してくれて非常に気持ちいい体験をしました。企画展示ほどの時間もかからずサックリ見れますし、美術に関心ある人は行ってみて損はないと思います。会期、あとわずかです!
会期
- 京都国立博物館 平成知新館 9月2日(日)まで
※こちらは美術作品に秘められた”つながり”を解説してくれる展覧会でした。
※日本人にとって「鬼」とはなんだろう?