歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを書きまくろうと思っていたら、仕事柄どうしてもTVの記事が多くなる今日この頃…

村上RADIO~RUN&SONGS~ほぼ書き起こし&感想

初めて(ちゃんと)聴いた村上春樹の声

f:id:candyken:20180808133035p:plain

 

DJ村上はけっこういい声だった

「けっこう村上さんの声って低いんだ…」それが村上RADIOを聴いた時の第一印象。もともとDJだったと言われても案外ナットクするような、”いい声”でした。最初は緊張からか、少し声にこわばりがあるような気もしましたが、進行するにつれ、気にならなくなり、エンディングではすっかりほぐれてしゃべられてました。あとやはり”声を知る”とその人がグッと身近になった気がします。

 

村上RADIOは選曲がいい

村上さんの小説は9割方、読んでますが、実は小説よりもエッセイが好き。特に旅モノ・音楽モノが好きで、音楽とか村上さんがエッセイに書いているものを素直に読んだりしてました。「ポートレート・イン・ジャズ」とか何度もその当該曲を聴きながら読み返した。音楽という”耳で味わうもの”をどうやって文章にするのか、という点で読んでるとすごく勉強になります。

今回の村上RADIOは村上さんがトークし、選曲もする、ということでとても楽しみにしていましたが、期待を裏切らない内容でした。本のエッセイで音楽の話を読むと自分で曲をかけないと音までは聴けませんが、ラジオだと音が鳴っている中で解説が聴けるのでとてもラクでした(ラクと言っては語弊があるかもしれませんが)。自分はそこまでコアな音楽ファンというわけではないので、知らない曲もいっぱい教えてもらいました。

ジョイ・ラモーンのパンク・ロックふうWhat a wonderful Worldとかバンドでコピーしたくなるくらい疾走感あったし、ジョージ・ハリスンの小粋なスタンダード・ナンバーなども、全然知らなかった。番組に取り上げられていた曲は繰り返しamazon musicで聴いてみようと思います。

 

radikoの限界まで書き起こししてみた

今回は8月5日のオンエアではなく、radikoというアプリで翌日に聴きました。radikoを使ったのはほぼ初めてですが、いつでも好きな時に番組を聴けて本当に便利だと思った。

で、聴きながらトークを書き起こしてやろうと思い、コツコツやってみたのですが、めちゃ手間でした…。しかもradikoに聴取制限というのがあるのを知らず、もう少しで全部書き起こせる、というところで配信停止になってしまった。特に質問コーナーの最初の部分は欠けています。残念…。でも9割程度はカバーできていると思います。

トーク内容については読んだことのあるエピソードもありましたが、村上さんがオープンカーを長年愛用していることとかは知らなかった。最近、自動車雑誌にも寄稿されたみたいです。

村上春樹、車を語る : ライフ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 

その他参考になるサイト

こちら番組HPですが、トークの要約とオンエアされた曲(全部ではない)が掲載されています。

村上RADIO - TOKYO FM 80.0MHz - 村上春樹

オンエアされた曲に関しては、完全に網羅したリストを作っている方もいるようです。

〇村上春樹の村上RADIO、初オンエア~完全セットリスト、アマゾン・リスト付き | 吉岡正晴のソウル・サーチン

 

ほぼ書き起こし

オープニング

00'05

こんばんは。(少し間があって)村上春樹です。

ラジオに出演するのは今回が初めてなので、僕の声を初めて聞いた、という方もきっとたくさんいらっしゃると思います。初めまして。これからの55分、僕の好きな曲をかけて、曲と曲との間に少しおしゃべりもします。いただいた質問にお答えもします。皆さんと一緒に楽しくひと時を過ごせれば、と思います。

 

♪テーマ〜Madison Time〜

00'43

(♪「Madison Time」)

01'08

今、かかっているこのテーマソングはドナルド・フェイゲン、スティーリーダンのドナルド・フェイゲンが、ジェフ・ヤングっていうキーボード奏者のバンドをバックに、2003年だっけなあ、ニューヨークでやったライブですね。(曲フリふうに)Madison Time。

このレイ・ブライアントっていうジャズピアニストが、作曲した曲で、1960年にヒットしたんですよ。レイ・ブライアントという人はすごく正統的なジャズピアニストで、マイルス・デイビスとかソニー・ロリンズとかと一緒に共演したこともあります。で、10代の頃の僕はすごく真面目なジャズファンだったんで、そんな立派な人がなんでこんなコマーシャルな音楽をやるんだろうと首をひねったんですけど、今、こうして聴くといいですよね。ちょうどね肩の力抜けててね。グルーヴィーでいいですよね。

(♪音楽)

僕はジャズの店を7~8年、やってたんですけど、太る暇なんてなかったんですよね。もう忙しくて。でも、一応専業作家になりたくて、店売っちゃって。そうするとね座業じゃないですか、そうするとだんだんだんだん太ってくるんですよね。で、タバコもやめちゃったし、ちょうど。だから、これはちょっと走んなくちゃなあ、と思って近所を走り出して。で、走るののいいところっていうのは、道具要らないんですよね。運動靴あればいい。スニーカーというか。ジョギングシューズが。で、相手要らないですよね。ひとりでできますよね。いつでも好きな時にできるし。こんなに素晴らしいことはない。

(少し間あって)

僕はね、だいたいいつもジョギングする時にiPodで音楽を聴いているんですけど、1台にだいたい1000から2000曲は入っています。それを7台ぐらい持ってるんですけど、その膨大なラインナップの中から、何曲かを今夜は選んで、お聴かせしたいと思います。

 

03’19

村上RADIO(タイトルコール)

ナレーション:村上RADIO~RUN&SONGS~ この番組は「 未来の あたりまえを 作る。」BNP大日本印刷の提供でお送りします。

 

03’40

(CM)

 

走る時に聴く音楽は?

05’20

(♪トランペット)

村上RADIO(タイトルコール)

今夜のテーマは僕の走る時に聴いている音楽、ということになります。走る時に聴く音楽はどういう音楽が適しているか、という話になるんですけど、これは割に簡単で、要するに難しい音楽はダメ!ということになります。まず第一にリズムが途中で変わるとすごくやりにくいんですよね。だから一貫したリズムで、できればシンプルなリズムの方がいいんですよね。で、メロディーがすらっと口ずさめて、それでいてできることなら勇気を分け与えてくれる音楽が理想的です。具体的にどういう音楽かというと、例えば、そうだな、こういうのを聴いてみてください。

 

♪Heigh_Ho/Whistle While You Work/Yo_Ho

(♪「Heigh_Ho/Whistle While You Work/Yo_Ho)

この曲はブライアン・ウィルソンが作ったディズニー関連の曲を集めたアルバムの中の一曲です。これ、3つの曲が一緒になってるんですけど、一つ目は「YO_HO」。これはディズニーランドの「カリブの海賊」のテーマ音楽です。で、後の二つは「Heigh_Ho」と「口笛吹いて」。この2つは1973年に公開された「白雪姫」の中の音楽で、つまり、ディズニーの古い映画のテーマと一番新しいテーマを一緒にしちゃったというすごく組み合わせが面白いんですよね。

(♪ 音楽)

09’25

ブライアン・ウィルソンのセンスというか、これもアルバム出た時は「なんでブライアン・ウィルソンがディズニーの曲集出すわけ?」とかちょっとね、首をひねったんだけど、今はすごく楽しんで、このアルバム聴いてますけどね。で、ビーチ・ボーイズがデビューした頃からずっと同時代的に聴いてきたんですけど、出会いはもちろん「サーフィンU.S.A」ですね。

 

♪Surfin'U.S.A

09'50

(♪ 「Surfin'U.S.A」※ギターのイントロ)

サーフィンミュージックというコンセプトがね、すごくカッコよかったんですよね。しびれました。あれからほとんどしびれっぱなしだったけど。考えてみれば、ブライアンというか、ウィルソン三兄弟が生まれて育った街はカリフォルニア州のホーソンという街で、これはあの、アナハイムに近いんですよね。アナハイムにはディズニーランドがあるから、子どもの頃のブライアンはディズニーランドに行くのがすごく好きだったみたいです。ウィルソン三兄弟のうちで、みんなほかの人が死んで、ブライアンだけが生き残って、今もこうして熱心に演奏活動をしているというのは、ちょっと信じられないというか不思議な気がするんですよね。というのはブライアンというのは、どちらかというと天才肌で、超センシティブな人で、その現実の世界とはうまく折り合いをつけてやっていけないというようなタイプの人だったから、そういう人だけが生き残るって、なんか不思議だなあという気がします。まあ、でも人生ってわかんないですね。

(一瞬、空白)

割に走るのは昔から好きだったんですよ。高校時代もね、けっこう僕は、学校なんかで走らされるじゃないですか。で、僕は神戸の学校だったんで、六甲の山の上を走るレースというのが年に1回あって、けっこう僕ね、走るんですよね。そしたらね、あの~クラスの女の子とか道路に沿って並んでて、みんな何とかくん「頑張って~」とか言うんだけどさ、僕が走ると「村上くん。無理しないで~」っていうんですよね。それはないだろうと思うんだけどね。

 

♪D.B.Blues

(♪ 「D.B.Blues

これはキング・プレジャーという人が歌った「D.B.Blues」っていう曲なんです 。キング・プレジャーというのは「王様の喜び」。で、これはもちろん芸名で、本名はクラレンス・ビークスっていうんですよね。クラレンス・ビークスというのはほんと田舎っぽい、ド田舎の名前なんですよ。で、本人もこれでは絶対に芽が出ないと思って、考えた末に「王様の喜び」という意味のド派手な名前をつけました。

で、このキング・プレジャーという人は、ジャズでいうボーカリーズ、つまりジャズの器楽ミュージシャンがした演奏あるいはアドリブに歌詞をつけてそのまま歌うというタイプの歌手の草分けの人です。これはレスター・ヤングが、ジャズテナーのレジェンドみたいな人ですけど、この人は1945年に発表した「D.B.Blues」というブルーズ曲に彼が歌詞をつけて歌ってるんですけど、DBというのは何の略かわかんないでしょ。これはね Disciplinary Barracks っていう、つまりあの、陸軍刑務所のことなんです。で、レスター・ヤングは実際に麻薬所持の罪で1年間、陸軍刑務所にぶち込まれてます。これはとてもとても過酷な体験であったようで、その体験はレスター・ヤングの人生とか人柄とかをずいぶん変えてしまったということです。この終わりのほうでテナーのソロが入るんですけど、これはヒューストン・パースンというテナーサックスの奏者なんだけど、シングル盤用の録音なんで途中でフェード・アウトしてしちゃいます。気の毒です(笑)。昔はね~、もういい加減ですよね。適当に。あのシングル盤というのは3分ちょっとしか入らないじゃないですか。だから適当に時間来ると、すーっと切っちゃうとかね。適当にやってます。

 

♪Sky Pilot

(♪ 「Sky Pilot」)

16'07

これはエリック・バードンとジ・アニマルズのSky Pilot。このSky Pilotは1968年のヒット曲だったんですけど、その頃はちょうどベトナム戦争がたけなわの頃で、ラジオからこの曲が聴こえてくるとなんか空気がひりひりするような、そういう特別な感触がありました。この中ではね、途中で「汝殺すなかれ」というメッセージが入っていて、基本的には反戦歌なんですよね。だからアメリカのラジオではそういう政治的な理由からあんまりかけてもらえなかったみたいです。演奏時間が7分23秒、あるんですよね。で、当時のシングル盤には片面には入り切らないので、A面、B面、Part1、Part2に分けて入っていました。でも僕がラジオで聴いている限りは、だいたい続けてかけてましたね。ただDJの人が自分でお皿をひっくり返すんで、途中に空白の時間が入るんです。

17'11

(実際に空白が入る)

空白がカッコいいんですよ。だから昔のこういうシングル盤文化というのは、けっこう面白いものがあったんですよね。

これ、ベースラインがカッコいいんですよね。けっこうよく聴くと。これは僕、走りながら聴くのも好きなんだけど、車を運転しながら聴くのが好きなんですよね。僕はずっとオープンカーを持ってまして、あのシートが2つしかないオープンカー乗り継いでいるんですけど、もう二十何年。で、天気のいい日に屋根を開けて、これ聴きながらね、歌いながら運転するのが好きです。ディストーションかっこいいですよね。ジェット機のエンジンみたいな感じのディストーションの感じなんですよね。

この後半にバグパイプ、が入るんですけど、これはあの~スコットランドの連隊の行進曲なんです。スコットランドの部隊というのはラッパの代わりにバグパイプを使うんです。だからあの~アニマルズもイギリスのバンドなので、こういうのが入ってきちゃうんですね。結局、Part1、Part2に分けて、Part2は結構好きなことをやってるという感じで、破天荒な部分があって、何でもありという。

(♪音楽)

 

21’58

(CM)

 

村上春樹さんに聞いてみたい音楽に関する質問

23'38

村上RADIO(タイトルコール)

※ここからしばらく坂本美雨さんとの対談形式

坂本:今回、村上RADIOでは、放送に先駆けて「村上春樹さんに聞いてみたい音楽に関する質問」というのを募集したんですけど、私、坂本美雨がリスナーに代わって村上春樹さんに音楽の質問をぶつけたいと思います。

村上:よろしくお願いします。

坂本:国内だけではなく世界中から質問が届いたんです。本当にすごい数だったそうなんですけど

(途中略)

村上さんが希望する自分の葬儀の時にかけてほしい音楽は何でしょうか?この質問、村上さんの葬儀でかけたい曲というのはなんと、30通くらい同じ内容の質問が届いていたそうなんですけど。

村上:何でみんなそんなことよく考えるんだろうね。

坂本:みんなやっぱり興味があったんですね。

村上:葬儀の時にかけてほしい音楽。ん~やっぱりビージーズのナイトフィーバーがいい、というのはもちろん冗談で、嘘です。

坂本:よかった。よかったというか…。

村上:マイウェイに関してなんですけど、僕、マイウェイってあんまり好きじゃないんですよ。なんか常々うっとしい曲だな、って思っていて。

坂本:確かにねっとりはしてますよね。

村上:でもこないだね、アレサ・フランクリンって人いるじゃないですか。

(♪音楽「マイウェイ」アレサ・フランクリン)

村上:あの人の歌うマイ・ウェイを聴きまして、こんないい曲だったのか!と思ってね、感動した。アレサ・フランクリンっていいですよ、やっぱり。で、生きてる時にずいぶん音楽しっかり聴いたから、死ぬときくらいは静かに死んじゃおうかなって思います。

坂本:というのは、ノーミュージックですか?

村上:うん、静かな方がいいですね。

(♪音楽が止む)

坂本:例えばプレイリストを作っておくみたいな、考えられたりもしませんか。

村上:昔、よくほらあの、マイテープとか作って女の子に聞かせたりして、シラケられたりして、シラケられたりすることあるじゃない。

坂本:やられましたか…

村上:ああいうことをもう繰り返したくないから、死ぬ時は静かに死にます。

 

坂本:サブマリンさんからの質問なんですが、「村上さんはロック、ジャズ、クラシックなど多岐にわたるジャンルを聴かれていますが、いつもいつも何かしらを聴いている人生ですか?それとも全く音楽を聴かない時期というのはこれまでありましたか?」

村上:全く音楽を聴かない時期というのは特にないですけど、僕はヨーロッパに2~3年いたことがあって、その時はあちこちずっといろんな国といろんな住まいを移り歩いてたんで、カセットテープのウォークマンか、ラジカセしかなかったんですよね。だからその時は、何にもなかったですね、持ち物が。気楽でよかったなあ。

坂本:へえ~。

村上:ちょうどね、僕がヨーロッパで「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス」書いてる頃には、音楽のない生活をしていました、ほぼ。

坂本:ふ~ん。

村上:ただウォークマンで走る時に、朝、走る時に、あの頃、80年代からペット・ショップ・ボーイズとかデュラン・デュランとかそんなのしか聴いていなかったですよね。

(♪音楽)

だから僕、今でもノルウェイの森見ると、今でもあの、ぺット・ショップ・ボーイズのサバービアを思い出して…。

坂本:へえ~

 

坂本:続いてはこの質問です。ラジオネーム、ジャイ子さんからです。「音楽がない世界と、猫がいない世界。どちらかをどうしても選ばないといけないとしたら、村上さんどちらの世界を選びますか?」

村上:すっごい難しい質問ですね。

坂本:難しいですよね~。

村上:僕はこういう二者択一の質問には答えないようにしてるんですよね。

坂本:あ、そうですか。

村上:というのは、軽い気持ちでどっちかいいですよ、と言ったら、そのあと本当にそうなっちゃってるかもしれないじゃない。

坂本:ふんふん。

村上:そうしたら後ですごく後悔しますよね。

坂本:そうですね。

村上:だからたとえ仮定の質問でも、答えない、と。

 

坂本:おじぎさんからのメッセージです。「村上さんがバンドを組むなら、バンド名はなんとつけますか?」

村上:ん~、バンドを組もうと思ったことないから、考えたこともないんですよね。ただね、バンドの名前つけてくれ、っていうね、言ってくる人は時々いるんですよね。

坂本:そっか~。

村上:昔、僕が店やってた頃、80年代始めだけど「バンド組んだんで、名前つけてください」って言うから、僕も、う~ん、思いつかなくて、「アース渦巻き&ファイヤー」ってのはどう?って言ったら、「人のことバカにしてるでしょ」ってすごく怒り出してね。

坂本:非常に音楽が偏りそうな…

村上:いい名前だと思うんだけどな。

村上:猫の名前つけるのも難しいけど、バンドの名前つけるのも難しいですよね。

坂本:そうですね。村上さんはペンネームと言うのは考えられましたか?

村上:いや、小説家になろうと思わなかったから、考えなかったんですよね。ペンネーム作っときゃよかったなって思うんです。今でもね、例えば、村上春樹さんて呼ばれるじゃない。

坂本:病院とか

村上:病院とかで。皮膚が荒れて、皮膚・性病科のところ行ったんですよね。そしたら村上春樹さん、村上春樹さんってすごく呼ばれて、すごい恥ずかしかった。皮膚です!って言いたいんだけどさ、言えないですよね、そんなこと。

※対談形式、ここまで

 

 ♪What a Wonderful World

(♪音楽「What a Wonderful World」)

あ、ラモーンズ。ジョイ・ラモーン!

31'30

僕が走るながら聴く音楽。これは、ルイ・アームストロングのオリジナルですね。「What a Wonderful World」。で、本当はすごいバラードでルイ・アームストロングが歌ってるんだけど、ジョイ・ラモーンはこのリズムで、勇敢にもというか、ラモーン関係の人って、こういうリズムでしか歌、歌えないんじゃないかというかと思うんだよ(笑)。唯一アップ・テンポのWhat a Wonderful World。

 

♪Between the Devil and the Deep Blue Sea

31'56

(♪音楽「between the devil and the deep blue sea」曲頭のカウントダウンのみ)

これはジョージ・ハリスンですね。これは1932年にハロルド・アーレンがつくった古いスタンダードソングなんですけど、原題の「between the devil and the deep blue sea」というのは辞書的に言うと「絶体絶命」とか「進退きわまって」というような慣用句になるんだけど、イギリスにテレンス・ラティガンという作家がいまして、この人が「深く青い海」という戯曲を書いてるんです。僕は18歳くらいの時にこの戯曲を読んですごく心を打たれたんですけど、その中で若い女の人が出てきて、彼女は「前から悪魔が迫ってきて、後ろに崖の下には深く青い海が広がっていたら、わたしは深く青い海の方を選びます」と言って自殺をはかります。だから、その「深く青い海」というのは慣用句なんだけど、そこでは本当のリアルなイメージを持って語られてるわけですね。その戯曲を読んで、僕はそれが好きになって同じタイトルを持つこの曲をよく聴くようになりました。で、ジョージ・ハリスンはこれを彼は2002年だったけな、遺作のアルバムの中で歌ってるんですけど、のんびりしてて、なんか遺作っぽくなくて、湿っぽくなくて僕は好きです。ものすごく走る時には気持ちいい。

 

33'30

(♪音楽「between the devil and the deep blue sea」再びカウントダウンから流れる)

 

35'59

僕はもともと文章家になるつもりはなかったんですよね。どちらかというと音楽の方に興味があって、それを仕事にしてた人間なんで、そういう人が突然、小説書いちゃって、小説家になったんで、誰かのその小説から小説技法を学ぶというよりは、音楽から入っちゃってる方が近いですね。そのリズムとか、ハーモニーとか、フリーインプロビゼーションとか。書きながら割にそういうことをすごく意識して、それこそ踊りながらというか、踊りながらは書かないけど(笑)、フィジカルに書くのがすごく、そういう傾向が僕の場合は強いと思います。だから僕の本を読みやすいという人がいたら、そういう人たちとは割に音楽的に通じているんじゃないかなという気がすごくするんです。だから僕は文章の書き方というのはだいたい音楽から学んだというふうに言ってるんですけど。

 

♪Knockin' on Heaven's Door

36'57

(♪音楽「Knockin' on Heaven's Door」)

これね、ちょっとゆっくり休憩しながら走る感じでいいんですよ。

(♪音楽完奏)

 

40'44

ベン・シドランはね、コペンハーゲンのジャズクラブで会って話して仲良くなったんですよ。カフェ・モンマルトルという有名な古いジャズクラブがあって、そこに見たらベン・シドランが出てたんで、僕、ベン・シドラン好きだったんで、行こうと思って行ったら、向こうも僕のことを知ってて、休憩時間にテーブルに来てずっと話してたんですよ。けっこうね、趣味が合うんですよ。あの〜好きなピアニストがモーズ・アリソンっていうジャズ・ピアニストがいて、それからセロニアス・モンクがいて、その二人が好きで。そのずっとその話してて、後で「CD送るから」って言って、日本に送ってきてくれたんだけど、その中にこの「Dylan Different」っていうボブ・ディランの曲を集めたCDがあって、これ、僕すごい気に入って、なかでも、Knockin' On Heaven's Doorが一番好きです。

 

ジャズ・ミュージシャンとの交流

41’33

(♪音楽)

41'42

ニューヨークなんか行ってジャズクラブに行くとね、なぜかミュージシャンって僕の本をよく読んでいる人が多いんです。で、来てよく話したりして盛り上がります。カート・エリングというジャズ・ヴォーカリストがいまして、この人も僕のすごいファンだって言ってきましたね。それからランディ・ウェストンとも話したし、ウェイン・ショーターとも話したし、15歳の時にアート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズのコンサートを聴きに行って、その時ウェイン・ショーターが出てて、その話してたら「お前は一体いくつなんだ」と言われて、もう1964年かなんかの話だからね…。ほとんどあの頃はね、外人ミュージシャンというのは来なかったんですよね、すごく珍しかった。だから聴きに行ったんですけど。なんかよく分からないけど、珍しいから聴きに行こうと思って、それで生まれて初めてジャズを聴いて、打たれて、あれで人生が狂わされた(笑)。

 

文章のために下半身を鍛える

42'52

僕が走り始めた頃も走っている作家なんていなかったから、みんなに馬鹿にされてたけど、最近ずいぶん世の中も変わって来て、作家もよく走っているけど、僕が一番面白かったのは1984年かだっけなあ、アメリカに行って、誰かにインタビューしたいか?って言うから、僕はジョン・アーヴィングにインタビューしたいって言ったら、ジョン・アーヴィングはちょっと忙しいんだけど、朝セントラルパークを走るから、一緒に走るんだったら、その時にインタビューしていいって言うから、走ります!って言って、一緒に彼とセントラルパークを走って、インタビューしてました。

あれ、面白かったですね。やっぱり下半身がね安定しないとね、書けないんですよ、文章って。誰も信じてくれないけど。下半身がしっかりすると上半身は柔らかくなるんです。そうするとね、あの~、文章がうまく書けるようになるんですよね。フィジカルな能力ってすごく大事なんですよね、もの書く時には。だからみんなね、あの~椅子に座って字書いてると「体力要らないだろ」って言うふうに思うだけど、そんなことはなくって、体力がないと2時間も3時間も机に座って集中して文章を書いていくなんてできないんですよね。だからもう35年間、フルマラソン走ってますね、毎年1回は。

 

♪Love Train

44’13

(♪「Love Train」)

これね「Love Train」。オージェイズのヒット曲をホール&オーツがカバーしたバージョンです。

(♪音楽)

 

 46'36

これは1989年公開の「ボクの彼女は地球人」という映画の挿入曲なんですけど、原題がEarth Girls Are Easy.。「地球の女の子はすぐにやらせてくれる」というすごい、ひどい題の映画です。でも、そんなに簡単じゃないというふうに僕は宇宙人の人にアドバイスしたいけどね。でも聞いてくれないだろうなあ。で、この映画は僕は観たことがないんですよね。どうせくだらない映画だとは思うんだけど、でも、ジーナ・デイビスとジェフ・ゴールドブラムが主演してるという、割にちゃんとした映画みたいです。もし観た人があったらどんな映画か教えてください。このホール&オーツのバージョンはこのサントラ盤でしか手に入りません。誰も買わないですよ、こんなもの。僕ぐらいしか。

 

47’55

(CM)

 

49'35

(♪「Wouldn't It Be Nice」※イントロのみ)

村上RADIO(タイトルコール)

 

♪後テーマ〜Light My Fire〜

49'42

(♪「Light My Fire。」)

50'13

これはもちろんドアーズのLight My Fire。もし僕が野球選手で神宮球場に出るとしたら、テーマはLight My Fire。もうこれに決まってるんですけどね。ただ出る話がない(笑)。脱力感があるでしょ、けっこう、これは。ジム・モリソンとは違って。ヴァイオリンを弾いているのはヘルムート・ツァハリアスという人で、こういうロック系の曲を演奏するのは珍しいです。

 

51'12

村上RADIO。いかがでしたでしょうか。僕は意外にというか、けっこう楽しかったです。質問をたくさんお寄せいただき、ありがとうございました。最後になりますけど、僕が好きな言葉を一つ引用させてください。これはスライ・ストーン、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのリーダーのスライ・ストーンが、こんなことを言いました。

「僕はみんなのために音楽をつくるんだ。誰にでも、馬鹿にでもわかる音楽をつくりたい。そうすれば、誰ももう馬鹿ではなくなるから」

いい言葉ですよね。僕はすごく好きなんです。それでは今日はここまで。またそのうちにお目にかかれるといいですね。さようなら。

(♪音楽)

 

ナレーション:村上RADIO~RUN&SONGS~。この番組は「 未来の あたりまえを 作る。」BNP大日本印刷の提供でお送りしました。

 53'08

♪音楽フェードアウト)

 

最後に

すごく楽しい番組だったのでぜひシリーズでお願いしたいところです。今回はクラシックは取り上げられなかったのでそういうジャンルも入れて。 iPodに何万曲も入っているので永遠に村上RADIOを続けられそう。また村上さんは異様にカルチャーに詳しいので、音楽に限らず文学などでも縦横無尽に語ってほしいです。