オーケストラの相思相愛の楽器とは?
- ちょうどいいレベルのクラシックのウンチク
- 今回の番組出演者
- 番組冒頭はあの有名なブラームスの舞曲
- オーケストラの楽器を初歩から学ぶ
- 作曲家はなぜ自分が演奏できない楽器の旋律が書けるのか
- 指揮者のスコアは何のため?
- 同じ曲なのになぜいくつもバージョンがあるの?
- 最後に
ちょうどいいレベルのクラシックのウンチク
NHK・Eテレのクラシック番組「ららら♪クラシック」が好き。ふつうに音楽を鑑賞していただけでは分からないクラシックのウンチクを、そこまでマニアックにならない程度に教えてくれます。そのレベルがちょうどいいのです。でのそのレベルの知識を頭に入れておくだけでもより一層、音楽の世界を深く味わうことができます。
特に先日2週連続で放送していた視聴者からの疑問・質問に答える放送回は、クラシックの”鑑賞体験に役に立つ知識”という観点からはとても意味があるものでした。このブログでそのポイントをまとめておきたいと思います。まずは第1週目の「オーケストラの音色の秘密」から。
※青字の部分は自分の感想のつぶやきです。
今回の番組出演者
- 高橋克典(歌手/俳優)
- 牛田茉友(NHKアナウンサー)
- 宮川彬良(作曲家)
番組冒頭はあの有名なブラームスの舞曲
番組冒頭は誰もがそのメロディーを聞いたことがあるであろうブラームスの有名な舞曲でした。
指揮::川瀬賢太郎さん、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団。
ブラームスはロマの音楽を基にして21曲からなる「ハンガリー舞曲集」を書いたそうです。もともとピアノの連弾曲だが この第5番はシュメリングという音楽家のオーケストラ編曲で知られるとのこと。ロマとはかつてはジプシーと言われた、ヨーロッパを移動しながら暮らす民族のことです。
※番組の映像ではないですが、音楽の参考のためyoutubeの映像を張り付けておきます。
オーケストラの楽器を初歩から学ぶ
1つ目の視聴者からの質問は…
Q.オーケストラにはどんな楽器があるのでしょうか?
番組からの回答は…
オーケストラの楽器は4つのグループからできている。
- バイオリンやチェロなどの弦楽器
- フルートやクラリネットなどの木管楽器
- トランペットやトロンボーンなどの金管楽器
- ティンパニやシンバルなどの打楽器
セクションごとに聴いて実験してみる。そして出演者が感想を。
■弦楽器だけの演奏
高橋:十分分厚い。音が。
宮川:歌心。気持ちがこうこすれて熱くなった物が出てる
■木管楽器だけの演奏
高橋:ごく素朴、清らか。
宮川:木管楽器は英語ではウッドウィンズと呼ばれる。西洋的には風の楽器。
■金管楽器と打楽器だけの演奏
宮川:金管楽器は遠くまで聞こえるっていう事で開発された歴史がある。これから戦だ、みたいな。郵便が来たぞ〜とか。だから「お知らせ」とか「ファンファーレ」とかが得意。でもずっとお知らせしてるとどこが知らせだか分からなくなる。金管楽器と打楽器はここ!っていう時だけ出てくる。
金管楽器と打楽器は知らなかった!打楽器は確かにそんな気もするけど、金管楽器も割と決め打ちな感じで登場するんですねえ。
作曲家はなぜ自分が演奏できない楽器の旋律が書けるのか
2つ目の視聴者からの質問は…
Q.作曲家の方は自分が演奏した事が無い楽器のパートはどのように楽譜を書くのでしょうか?
作曲家・宮川彬良さんからの回答は…
宮川:日々勉強ですが、友人から教わることも。コミニュケーション取りながら覚えていく。
ナレーション:天才と呼ばれる作曲家たちも演奏者にアドバイスをもらいながら曲を作った。例えばモーツァルトのクラリネット協奏曲。当時、クラリネットは新しい楽器 演奏する人も少ない中、名手といわれたのがアントン・シュタットラー。モーツァルトは彼と相談しながら作った。
ハイドンのトランペット協奏曲、ブラームスのバイオリン協奏曲など楽器の名人から学んで生み出された局はたくさんある。作曲家の中にはそうして学んだ経験を本にまとめた人もいる。特に有名なのは華やかなオーケストラ曲で知られるリムスキー・コルサコフが書いた管弦楽法の教科書。バッハやモーツァルトなどの楽譜を集めオーケストラの研究者を重ねた。さまざまな楽器の音域や効果的な使い方などが詳細に書かれている。
著名な作曲家が書いたテキスト紹介
宮川:ゴードン・ヤコブさんっていうひとが書いた「管弦楽技法」。自分の父の宮川泰がこれを持っていたので熱心に読んだ。
宮川彬良さんが書いた教科書紹介
「編曲の本」というタイトル。日本人の音楽家20人くらいで共同で書かれた本。宮川さんはオーケストレーションというコーナーを執筆。
この中で「楽器相性早見表」という宮川さんが作成したチャートを紹介。
牛田:彬良さん特製の楽器相性早見表です。どの楽器を一緒に鳴らすとどんな音色になるのか、相性のよしあしを人間関係に置き換えてユニークに表現しています。
宮川さんによれば…
- 結婚…当たり前に一緒に使われる。
- 愛人…意外な組み合わせが実は響き合う。しかしあまり多用すると溺れてしまう。その音ばかり使うとクセになる。
- 知らんぷり…音が溶け合うことは可能だがあえて知らんぷりしている関係。
それぞれの関係を実際の演奏で実験してみる。
■結婚…バイオリンとフルート。
甘くて柔らかい響き。
■知らんぷり…バイオリンとオーボエ
硬い響き。
宮川:オーボエは自分で歌おうとする楽器。メロディーを奏でるのが大好き。バイオリンも歌うことが多い楽器。おれのビブラートに合わせろよ!的な。ベルトとサスペンダー両方しちゃった どっちかにしてあげたほうが両者は楽に演奏するだろうな。
■愛人 …温かい響きのチェロ。これに金管のホルンを加える。
高橋:違いがよくわからない
宮川:もうちょっと迫力がほしいね。
もう一度、演奏してみる。
高橋:ぶつかりつつもすごく近い。響き合う。
宮川:ちょうど切なくなる音域が似ている。高いなー 緊迫してるぞー 熱いぞー。音域が両者本当に似ている。切迫感とか非常に醸し出しやすい。ただし癖になりやすいからこればっかり書くな。だから愛人。
管楽器同士ならいったいどうか?
■ホルンとオーボエ
高橋:これはエロい!この組み合わせは何か見える。
宮川:空気が深いピンク色に染まった感じしませんでした?
高橋:なんかすごいワケありだし
まとめ
宮川:楽器の数はこの数だけでは無い。組み合わせによっていろんな音色が出てくる。塊に聞こえているオーケストラの音だけど実はいろんな音色がある。そこが醍醐味。
指揮者のスコアは何のため?
3つ目の視聴者からの質問は…
Q.指揮者はあの忙しい指揮の間にスコアを見る余裕があるのですか?
今回のららら♪クラシックにも出演している指揮者・川瀬賢太郎さんからの回答は…
川瀬:3か月とか4か月前から勉強している。基本的には覚えている。自分が注意したい点があり書いてあり、そこには付箋が貼ってある。付箋の箇所がくると安心感を覚えながら本番に臨んでいる。
まとめ
付箋で注意点を確認している
同じ曲なのになぜいくつもバージョンがあるの?
4つ目の視聴者からの質問は…
Q.同じ曲でもなぜいろんなオーケストラの編曲があるのでしょうか?
作曲家・宮川彬良さんからの回答は…
宮川:ピアノがもとの曲をオーケストラにアレンジしたらこうなった、とか別の人がアレンジするとこうなりました、というのが多い。
ナレーション:有名なのが組曲「展覧会の絵 」。この曲はピアノ曲として書かれたものよく知られているのはラヴェルの編曲トランペットのソロから始まる華やかな曲です。
それに対してストコフスキーの編曲は弦楽器と木管楽器が中心。原曲の持つ ロシアの土の香りが漂う編曲といわれています。
宮川さんが「ハンガリー舞曲第5番」を編曲してみた。
ナレーション:もともとピアノの連弾曲。オーケストラとして有名なのはシュメリングが編曲した作品。哀愁を帯びたメロディーを際立たせるバイオリンが主役の編曲となっています。
一方、彬良さんの編曲はメロディーを奏でる楽器が次々と変わっていきます。全ての楽器の特色をいかし色彩豊かな編曲になっています。
宮川:シュメリング版はリズミック。ぼくの場合はメロディーがおしゃれに響くように考えてアレンジした。
ナレーション:シュメリング版はメロディー、リズム、ハーモニー、全ての要素が弦楽器に含まれている。メロディーはバイオリンが担当。リズムとハーモニーはビオラとチェロが担当。
宮川:そこを変えてみよう。第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、全員がメロディーをやった方が迫力が出る。もっと凄みのあるメロディーになるんしゃないか。しかしそれだときまじめな感じもしちゃう 全員で意見がそろいすぎです、みたいな。途中でハーモニーをつけてみた。オクターブでまずはじめて、メロディーがいつのまにか和音(ハーモニー)になってしまう 最後はユニゾン(同じ音)になる。
宮川彬良編曲の「ハンガリー舞曲第5番」を聴いてみる。
以下、曲解説のテロップ
- 木管楽器の素朴な響きを使い「手回しオルガン」の雰囲気を醸し出す。
- バイオリンの奏でるトレモロはハリウッド映画のようでもある。
- 金管楽器も使ってコミカルな雰囲気もちりばめられている。
最後に
楽器ごとに他の楽器との相性がある、という話はたいへん面白かった。ブログだけだとその音が伝わらないのが残念ですが…。
よろしければ今回の続きとなる「オーケストラ 鉄壁のアンサンブルの作り方」もどうぞ!
※バッハ、モーツァルト、ベートーベン。それぞれの強みや魅力を探った回の、完全書き起こしです。