サカナクションのライブはプロの仕事がギュッと詰まっていた。
- サカナクションだけはCDで買う
- 音に異常なこだわりを持つ山口一郎
- サカナクションライブを支えるプロフェッショナルたち
- 番組出演タレントによるサカナクションの印象。
- 6.1chサラウンドシステムとは
- プロフェッショナル それぞれの役割
- 山口さんの4人のプロ集団に対してある特別な思い
- 山口さんのプライベートスタジオ
- 本当はここまで極めたい‼︎ サカナクション山口の理想のライブ
- ジャムセッション 夜の踊り子
- サカナクションもプロだが 関ジャムもプロだ
サカナクションだけはCDで買う
サカナクションが好き。今、日本で活躍しているロックバンドで唯一、すべてのオリジナルアルバムを持っているくらい好きです。
軽快でダンサブルなリズムの上を走る叙情的なメロディー。歌詞だけ取り出しも”詩”として成立するような豊かな言葉の世界。ほんと魅力的なバンドだと思う。
そのサカナクションが、これまた自分の好きな番組「関ジャム」に出演するという。これは見ねばなるまい、ということで見てみたらやっぱり面白かった!
サカナクションのライブに詰まりまくっているプロの技も凄かったし、もっと根源的に「音楽ライブの音&映像ってこんなふうに作られてるんだ」という一般的な教養としても非常に勉強になりました。
ということで、サカナクションファンもそうでない方も、音楽ファンなら楽しめる知識満載だった今回の内容。まとめておきます。
音に異常なこだわりを持つ山口一郎
番組スタッフが山口さんに音のこだわりっぷりを聞いてみたらしい。
山口:レコーディングした音は外部に持ち出さない。
音もデータだけで販売したい。
CDにすると圧縮されちゃう。
CDでもNGなのか…。こりゃライブに行くしかない!ってなっちゃいますね。
サカナクションライブを支えるプロフェッショナルたち
今回、バンドメンバー以外でスタジオに呼ばれたゲストの方々は、以下の皆さんでした。
- システムエンジニア 武井一雄
- PAエンジニア 佐々木幸生
- 照明デザイナー 平山和裕
- マニピュレーター 浦本雅史
今回はこの”裏方”の方々が主役だったので、バンドメンバーよりもMCに近い位置で出演されてました。
番組出演タレントによるサカナクションの印象。
山本彩…ポップでキャッチー。中毒性がある。
錦戸亮…ずっとこの番組にサカナクションに来てほしかった。4年かかった。
6.1chサラウンドシステムとは
サカナクションの音のこだわりの象徴でもあるライブの6.1chサラウンドシステム。でも、そもそも6.1chってなんだろう。番組で丁寧に解説してくれていました。
2ch
一般用の家庭用テレビのスピーカーと同じ。左右から別の音が出ていて音が2次元的に感じられる。通常のコンサートはこれが主流。イヤホンもこれと一緒。
5.1ch
シアタールームで使われる。スピーカーは前方左、前方正面、前方右、後方左、後方右 サブウーファー。立体的に音を楽しむ。
サブウーファーとは
「5.1」の「.1」にあたる低音スピーカー。「ヤンキーの車の後ろに積んである」(by山口さん)。
6.1ch※サカナクションがライブで導入
スピーカーは前方右、前方左、真ん中右、真ん中左、後方右、後方左、サブウーファー。5.1chに横のスピーカーが付け加えられているので、より包み込む音に。
スピーカーごとの音
- 前方…ボーカル&演奏&コーラス等
- サイド…コーラス&シンセ等
- 後方…コーラス&ボーカルのエフェクト等
- サブウーファー…キック音やベース音等
プロフェッショナル それぞれの役割
サカナクションのライブを支える4人の仕事を詳しく紹介。
システムエンジニア 武井一雄
バンドが演奏している音を、いろんな客席に正しく届くようにする。全ての観客に同じ音楽が届くようスピーカーの音量や出力タイミングを調整。
そのためのスピーカーの数は218本。これは通常のライブの3倍の数。
本番前には配置されたスピーカーの音がどう届いているか再確認している。このスピーカーの調整にかかる時間は4時間(通常のライブは1時間半ほど)。
午後6時半にライブ開演。武井が持ち場を離れて向かったのは客席。観客が入ると音の届き方響き方が変わる本番中にも、もう一度チェックしている。例えば「2階の音量を1dB上げる」など。
山口さんの武井さんへのコメント
「理解不能な計算式を操る変態」
アリーナという大きな会場で全ての場所で同じ音を聴かせるのは至難のワザ。
武井にとって音とは
音は1秒間に約340m進む。つまり、会場が170mの場合約0.5秒 音がズレる。音は光の100万分の一のスピードしかない。ありえないくらい遅すぎる‼︎
音が到達する数値を書き込んだ図面
赤いマーク→センターの客の位置、青いマーク→会場右側の客の位置。それぞれの客にスピーカーから到達する時間を示す。数字の単位は◯ミリ秒(1000分の1秒)。
ここまで音にこだわるので「幕張メッセ2days SOLD OUT、大阪城ホール2days SOLD OUTして赤字でした」(by山口さん)
PAエンジニア 佐々木幸生
スピーカーの設置をする。そもそもPAとは「Public Address」の略で大衆伝達の意味。
ミキサーという機械がある。ステージ上の音はマイクで拾われ、その音が全部ミキサーに集まりミックスされ、スピーカーから出力される。
スネアドラムひとつとっても、上のマイク 下のマイクがある。
全ての楽器の音をミックスして全体のバランスを調整するのがPAの仕事。
7種類のスピーカーごとに最適なミックスをする必要がある。
山口さんの佐々木さんへのコメント
「サカナクションのロック+サニー(佐々木)さんのキックでサカナクションのダンスミュージックの完成」
山口さんいわく「キックはバスドラ。ビートの基本になる。ロックって低音が意識しなくてもいい。ロックとダンスミュージックの良い違和感のためにはサニーさんの作る低音が絶対に必要。自分たちは演奏してるんで、どう聴こえてるかわからない。お客さんの反応を見ながらとんでもないことが起きてるのがわかる」
通常の音が佐々木の手にかかるとどう変わるのか
通常の音をイコライザー(周波数を操作して音質を変える。)で音を作っていく。イコライザーでキック音の音質を大きく変化させ音質を変えサカナクションの世界観を生み出す。ロックにダンスを感じるキック音に仕上げていく。
佐々木さんいわく「体感する部分が重要。ダンスホールというか、クラブに近いような音圧を出してあげる」「 楽曲自体が踊りやすい曲が多いので、クラブミュージックが好きだ、というのはあったんですけど、その要素を足していく」
PA佐々木とサカナクションの関係
出力する音量・音質でライブの盛り上げる所をサカナクションメンバーに感じさせる時も。たまにシンセをミュートしたままにすることも。「食材を一つ入れ忘れた…」(by佐々木さん)
照明デザイナー 平山和裕
10年間、サカナクションライブの照明を担当。照明の卓がある。その卓で曲に合わせて事前にプログラムしたシーンを再現する。
- 通常の照明の仕事…アーティスト&ステージを照らす。
- 平山の照明…音にシンクロさせた光で演出する。
音にこだわるサカナクションだからこそ、音に光を当てようと考えた。そのため光の数は膨大な量に。2017年9月幕張メッセージライブではLEDバーの数は511本‼︎ 音と光でアリーナを包んでみせた。
常に新しい演出を追求。
可動式球体LEDライトを世界で初めてライブに採用。これは上からワイヤーで吊るされたLEDを球をコンピューター制御で上下に動かすという仕組み。
ステージの空中の真ん中からひし形に開く特殊なアイリス幕など斬新な舞台空間も演出。これはカーテンの要領で遠隔操作する。
オイルアート。水と油を混ぜた模様をステージに投影。
音を光で演出する理由。「届けるものが音楽なんで、それが一番最初に届けばいいな。入り口が音」(by平山さん)
LEDについて。「ステージとお客様さんを同じレベルにしたい。一緒にしたい。 こっち見なくていいライブにしたい‼︎クラブみたくフラットにしたい、と平山さんに言ったら、LEDも全部囲んでサラウンドに合わせて周囲に回そうよ(と言われた)」(by山口さん)
山口さんの平山さんへのコメント
「ステージを照らすのは後回し‼︎音を光でライトアップする職人」
「本人に会える喜びの感じさせ方の種類が違う人。顔を見て照らさなくても全然、僕らを感じてもらえる」(by山口さん)
マニピュレーター 浦本雅史
ライブでは、バンドが出す以外の音をパソコンで管理して出す。生で演奏する以外の音を全てになう。
基本的にはレコーディングで彼らが作った音を使っている。
浦本さんいわく「レコーディングから関わっているので、自分がバランスとったものを自分でライブ用に準備する。メンバーと相談しながら、あれひく?これ出す?」
音作りを支える影の演奏者。
山口さんの浦本さんへのコメント
「サカナクションの6人目のメンバー」
「浦本さんがいないとぼくらライブができない。つまりはメンバー。僕らシャイなんで無口になって空気が悪くなるライブ前とかレコーディング中とか浦本さんは関西の方なので盛り上げてくれる」(by山口さん)
「空気を作るのは意識している」(by浦本さん)
「(山口さんと浦本さん以外のメンバー)仲良いよね」「(4人だと)お盆で実家に帰ってきた感がある。(会話の)テンポが遅い」「無茶言う人いないし、ブチ上げようとする人もいない…」(by山口さん以外のバンドメンバー)
山口さんの4人のプロ集団に対してある特別な思い
「人生で自分を変えてくれる人は5人ぐらい。その5人は父親以外は全員チームサカナクション。その4人に恥じないように…みんなに捨てられないようにやっていきたい」(by山口さん)
「こっちも捨てられないように」(by佐々木さん)
山口さんのプライベートスタジオ
テレビ初公開。中は白を基調としたシンプルなレコーディングスタジオ。そこにはサカナクションの5人が演奏する楽器やレコーディングに必要なミキサーが並んでいる。
スタジオの謎
- 謎1 壁に防音設備がない。
- 謎2 スピーカーが一つもない。
- 謎3 5つの高級ヘッドホン。一台20万以上。
「レコーディングスタジオっぽくない。撮影スタジオみたい」(by山本彩さん)
山口さんによるスタジオのコンセプトの解説
スタジオが謎である理由。それはあるコンセプトをもとに作られたから。
「音を空気に触れさせないまま楽曲を発売できないかな。サイレントスタジオ。音はヘッドホンの中だけ。リスナーが聴いた時に初めて音が空気に触れるようにヘッドホンの中だけで音を作れないかな。音楽をモノの価値としてどう高めていったらいいのか、いろいろ考えていてそれはコンセプトだろう、と。外に音が一切触れていない音をリリースしたい、な」(by山口さん)
「事務所とかレコード会社の人からしたら何言うてんねん!この変態が!」(byサバンナ高橋さん)
「ぼくら5〜6年アルバム出してない。何でもいいから早く出してくれ‼︎(と言われる)」(by
本当はここまで極めたい‼︎ サカナクション山口の理想のライブ
この考えはメンバーも知らない。実現可能かどうかはおいておいて…
スピーカー
天井、壁、ステージの後ろを全部スピーカーに、したい。スピーカーは別々に機能させたい(別々の楽器の音を出したい)。バランスはサニーさん(佐々木さん)に取ってもらいたい。
スピーカーを床に敷きたい
そのスピーカーは低音に反応するスピーカー。ボディソニック。アリーナの床に全部敷きたい
最後に可動式ピンポン球LEDをステージと客席の上全てに吊りたい
日本の消防法でお客さんの上に何かを吊ってはいけない。だからハコを作る。常設だったらOKだから。
ジャムセッション 夜の踊り子
錦戸亮さんが選んだ5曲のうちから「夜の踊り子」が選ばれた。
- 村上…キーボード&コーラス
- 錦戸…ボーカル&ギター
- 丸山…ベース
山口さんいわく「夜の踊り子は難しい曲で、テクニック的なところだけしじゃなくて、サビからベースシンセになる切り返しとか、音像が変わる、そこをちゃんと表現できればいいな」
(以下、ジャムセッション)
サカナクションもプロだが 関ジャムもプロだ
最後に。サカナクション山口さんの音への執着と、それを支えるスタッフさんのプロ仕事も凄かったですが、こんな専門的な内容をバラエティーのパッケージでくるんでエンタメに仕上げる番組スタッフも見事でした。情報性と娯楽性のバランスが絶妙。このバランスが取れている番組は昨今だと、「マツコの知らない世界」等マツコさん出演の一連の番組がそうなのですが、マツコさんのような強力なパーソナリティがいない中でのこの完成度は素晴らしいと思う。