食材の生産者と飲めるなんて滅多にない。
静岡市に泊まりの出張があった。静岡駅の南にホテルを確保(土曜の夜は部屋の空きがキビシイ。地方都市でもホテルは早めの確保が必要ですね)。静岡市に来たからにはやはり"静岡おでん"をいただきたい。で、駅の北側にあるおでんを食わせる店が集まっているおでん横丁に行くか、ホテル近辺で探すか迷う。
ただ、おでん横丁みたいな有名スポットに行って混んでていてもイヤだな、という危険回避の本能が働き、ホテル近辺のお店で飲むことに。
ホテルのフロントでおススメの店を聞く→「海ぼうず本店」という店を薦められる→その本店が満員で隣の姉妹店を紹介される…という流れで最終的に腰を落ち着けたのが「賤磯はん兵衛」というお店。
https://tabelog.com/shizuoka/A2201/A220101/22008680/
姉妹店とはいえこちらの店もテーブル席は全て埋まっている。こちらは会社の後輩と二人。カウンターに案内され、とりあえずビールを注文。接客をしてくれるベトナム人の女の子の笑顔がかわいいし、カウンター内で調理している男性スタッフもテキパキと仕事をさばいている。雰囲気はとてもいい。これは当たりの店だ。
おでんは7本で800円。さすが静岡の名物だけあって、味がよく沁みてて美味しい。自分は関西出身なので、おでんはほんのりダシの味、というイメージがあるけど、もっとしょう油がガツンと効いている感じがする。でもこれはこれでうまい。あと青のりと鰹節がかかっているのもポイント高いですね。口の中でいろんな風味を味わえる。
さらに静岡サラダ680円なるものを頼んだら、大きな皿に野菜がド〜ンと出てきた。
何やらまた”振りかけられている”。調べてみると、桜えびとじゃことバリ勝男くん、とか。
「バリ勝男くん」……なんだそれは?と思って調べてみると、静岡の地元企業が作っているかつおチップらしい。うん、けっこう美味しい。野菜の上にパリパリしたものがたくさん振りかけられているから、食感が刺激を受けて食べてる時の楽しさ倍増。それにしても静岡の人は何かを振りかけるのが好きだなあ。
目の前には”店長おすすめ”の張り紙が。「とうの芋唐揚げバター」と書いてある。
「とうの芋」というのも聞いたことないなあ…と思っていると、カウンターの隣で飲んでいたおじさんが
「それぼくが作ってるんですよ。ぼく、農家なんです」
と話かけて来られた。ぼくと後輩、
「え!」
と驚く。なんでも、ここの居酒屋チェーンの社長と提携して地元産の食材を使ったメニューを開発しているそうだ。
「ぜひ、食べてください。ご馳走します」
と言われ、何だか「旅は道連れ、世は情け」みたいな展開になってきて、ありがたくご好意を受けることにする。
いただいた「とうの芋」。張り紙の文句通り、とてもう滑らかな食感で、抹茶塩とよく合う。その農家の方から、とうの芋は里芋の一種、京都のえび芋みたいなもんです、と解説が入る。実際の作っている人の言葉を聞きながら、グルメできることの贅沢さ…。
その方から、これもぼくが使ったミカンを使ってるんです、とすすめられたのが静岡すっぱみかんサワー490円。
8月のミカンがまだ青いうちに、実を全部とってしまいそれを手絞りして、それを焼酎と混ぜて作るのだそうだ。
「夏の青いミカンを見ていると、自分の少年時代の夏休みを思い出す。それでそのミカンを何とか商品化したかった」らしい。
飲んでみると、ミカンの爽やかな柑橘感が存分に味わえて、とても美味しい。さらさらっと飲める。この酒を飲んでいると、今は冬だけど、静岡の夏の情景まで勝手に感じられて、土地を味わうというのはこういうことか、と思ったりする。いい夜だ。
美味しかったので、調子にのって5~6杯飲んでしまった。
「ミカンは身体にいいし、これ、何杯飲んでも酔わないですよ」
と言われてたのだが、帰る頃にはしっかり酔いは回っていた。でも、ホテルまでの道すがら、酔って火照った頬に静岡の夜の冷気が気持ちよかった。
静岡楽しいな。また来たい。