歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを中心にカルチャー全般、グルメについて書いています。

那須芦野・石の美術館@栃木県那須町・訪問記

石がきっと好きになる。気になり始める。

f:id:candyken:20180610115540j:plain

石と光のギャラリー 外壁

 

最近 隈研吾さんが面白い

最近、建築家・隈研吾さんの作品を鑑賞する機会が多い(実際の建築物というより展覧会ですが)。一般には2020年東京オリンピックのための新国立競技場の設計者として名を連ねている建築家ということで知られていると思います。

隈さんに興味を持ったきっかけはこの展覧会。 

www.rekishitantei.com

 

建築のデザインを愛でるというよりも、その建築を構成する材料に注目する異色の展覧でした。

隈さんは竹、木、時には紙などコンクリート以外の材料に相当のこだわりを持っていて、その一つ一つの材料を語る言葉も深いのです。

例えばこういう言葉。

竹は生まれながらにして直線で、その強い直線性は他の木にはない。

竹から幾何学の直線を感じるとか、建築家の感性ってやはり独特だなと。

そんな隈さんが「石」を材料にして造った美術館が栃木県・那須にあるという。今回、那須に一泊する機会があったので、足を伸ばして行ってきました。

 

地元の石だけが材料の美術館 

f:id:candyken:20180610120727j:plain

これが美術館の外観。石で出来た古風な蔵と、水の上に幾何学的に渡されたモダンな石橋が一つの空間にまとめられています。 

この美術館で使われている石は地元の芦野石。芦野石はほどよい硬度のため、耐久性を保ちつつ加工も容易なのが特徴。建物の補強に使われている木材も八溝杉という地元産のものらしいです。

 

個々の空間 味わうべきポイント

さて、美術館を巡ります。美術館は写真のように7つの空間で構成されています。

f:id:candyken:20180610121139j:plain

パンフレットより

1.で受付を済ませ、まずは3.石と光のギャラリーへ。

道行きの通路も非常にスタイリッシュ。

f:id:candyken:20180610121357j:plain

 

石の橋。隈さんいわく橋は「現実世界と異世界をつなぐ」ものだそうです。

f:id:candyken:20180610121434j:plain

確かに寺院建築などでも橋は重要。大きな池の浮かぶ島を”あの世=彼岸”に見立てて、橋を渡ることをあの世へ渡ることの象徴にしたりする。

 

これが石と光のギャラリーの内部。

f:id:candyken:20180610122834j:plain

部屋の入り口入ったところに電灯のスイッチがあって、消灯すると外の光が細長い窓状のスペースからボワッと差し込みます。漏れる光だけで暗い空間が淡く照らされる。これ、この美術館のいちばんの見どころだと思う。

 

この細長い窓のような箇所。実は厚さ6ミリの薄い石がはめ込んであるんです。ここ透けてくる光が実に味わい深い。この薄い石は捨ててあった大理石。昔のローマ人が考えた技術で、古代ローマではガラスが高価だったので、ローマ風呂の窓には、薄い石がはめられていたんだとか(隈研吾著「建築家、走る」より)。

 

あと、この「3.石と光のギャラリー」では隈さんのドキュメンタリーが常時放映されていて、隈さん自身がこの美術館について語っているのを目にすることができます。これをきちんと見てから美術館をめぐると、鑑賞体験が深くなること間違いなしです。

 

続いては石で造られた4.茶室。日本で初めて石で作られた茶室らしい。

f:id:candyken:20180610123140j:plain

隈さんいわく「茶室に石は冷たすぎる」と。ゆえに芦野石を500〜1200度で焼き締めて柱の一部に使ったそうです。

f:id:candyken:20180610123418j:plain

石を焼く…そんな手法があるんですねえ。焼かれた芦野石は赤く変色し、どこか焼きものめいている。石って面白い。

 

こちらは5.石の学習室。

f:id:candyken:20180610123512j:plain

もともと大地にある(埋もれている)石がどのような工程を経て、建築材料に仕上げられるのか丁寧に説明してあります。

f:id:candyken:20180610123739j:plain

f:id:candyken:20180610123827j:plain

「切る・削る」は分かるけど、石の加工に「叩く」「焼く」があるとは…。説明文の下にそういう加工を経た石がどのように変化するか、示してあります。手に入れた石にひと手間ふた手間かかることで、イメージ通りの建築材料に仕上げていく。なんか料理みたいだ。

 

日本や世界のさまざまな石材を一覧で見られるコーナーも。ここの写真は皆、大理石ですが、ひと口に大理石といってもほんとに表情が違います。

f:id:candyken:20180610123919j:plain

 

6と7はギャラリー。6では隈さんの他の建築作品も紹介されていました。

例えばこれはイタリアの「ストーン・カード・キャッスル」。

f:id:candyken:20180610124046j:plain

石のカードが組み合わされて建物を構成しています。「建築ってコンクリートとガラスで作られてて…」みたいな従来のイメージがどんどん壊されていく。面白いです。

 

自然×人の営み=建築だ

石の持つさまざまな可能性とそれを引き出そうとする人の営みにも感動してしまう「石の美術館」。石を鑑賞の対象として愛でつつ、その空間自体も石でできている唯一無二の施設です。建築好きな方はもちろん、鉱物が好きな人、地方ごとの自然環境に関心がある方など間口は広いと思います。興味のある方はぜひ行ってみてください。石を見る眼が変わります。

 

補足:至近距離にある那須歴史探訪館もおススメ

この「石の美術館」からすぐの「那須歴史探訪館」那須地域の歴史をコンパクトに学べる施設ですが、ここも隈さん設計の建築。

f:id:candyken:20180610124921j:plain

那須歴史探訪館

建物のデザインもモダンでカッコいいですが、やはりここでも建築に活かされた自然素材を見ることができます。

f:id:candyken:20180610125122j:plain

f:id:candyken:20180610125158j:plain

外壁に使われている茶色い素材は、ステンレスの素材にワラをまぶしたものだそうです。不思議な光景であり、質感でした。

もし余裕のある方はこちらへも足を運んでみてください!

 

※栃木県・那須で訪れたスポットを記事にしています。

www.rekishitantei.com

www.rekishitantei.com