歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを書きまくろうと思っていたら、仕事柄どうしてもTVの記事が多くなる今日この頃…

アートのある暮らし展 ART in LIFE ミック・イタヤの作品と生き方@しもだて美術館・感想

夢みること。地に足をつけること。

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GW中、東京から茨城にお出かけし、地元の方に誘われて行ってみたのが「アートのある暮らし展」@しもだて美術館(茨城県筑西市)。ミック・イタヤさんという水戸市出身のアーティストの個展だった。ミックさんのことは全然知らなかったけど、展覧会を見てみるとミュージシャンGONTITIのアルバムジャケットをデザインしたり、ファッションブランドBEAMSのデザインを手掛けられたりと、とても大きな仕事を手掛けられている方だった。また自分の出身である茨城の伝統工芸に対して継承し、未来に生かしていくことにとても意識的で、地元の職人さんとコラボした作品の展示もあった。

ポップかつキュートなのに、とても地に足の着いた展覧会という意味で、地元茨城の人も、県外から訪れた人もとても楽しめる展覧会だと思うので、幾つかポイントを絞ってレポートします。

※ちなみに全編写真撮影OKでした!(フラッシュはNG)

 

ミック・イタヤさんてどんな人?

展覧会に掲示されていたプロフィールから一部、抜粋しておきます。

茨城県水戸市出身。多摩美術大学卒業。流麗な線と鮮やかな色彩で、星や天使や女神や神話をモチーフにし、自然と人の煌めきを表現している。

ユニクロ創業時のロゴや、東京スカイツリーの壁画なども手がけられているらしいです。

※ミックさん詳しいプロフィールを知りたい方はこちらのホームページをどうぞ。

www.nadeshico.co.jp

 

 ※こちらのページには東京スカイツリーの作品が。

www.micitaya.com

 

ポップでキュートな神話の世界

プロフィールのところで「星や天使や女神や神話をモチーフにし、自然と人の煌めきを表現している」とあるように、ミックさんは古代ギリシャやローマふうの神話の世界が大好きみたい。例えば、こんな作品。

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登場人物が裸であったとしてもほとんどエロスは感じない。これは、人間が恥ずかしさを感じる以前の、何も身につけていないことが自然な、神話的メルヘンの世界を描いているからだろうか。

 

こちらの作品にはミックさん自身の詩も作品に添えられている。

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太陽も月も、われわれもすべてが一つ、という作家の世界観が語られる。太陽にも月にも人格があって、その人格は自分ともつながっている。ゼウスやアテナなど多くの神々が生き生きと躍動するギリシャ神話の世界観にも通じる。日本も、山や木や滝に聖性を感じる多神教的(アニミズム的)な国。優れたアーティストの感性は古代人的なのかもしれない。

 

古くて新しい! サウンドとヴィジュアルの融合

ミックさんが1980年代に創刊したカセットマガジン「TRA」

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なんと雑誌とカセットが一つになっている。サウンドとヴィジュアル&テキストを融合する、という今だったら当たり前のメディアミックスを30年以上前にアナログのまま実現していたのには驚く。ニューヨーク近代美術館の永久保存作品にも指定されているらしい。もうこのような形態の雑誌(というか媒体)は現れないだろう。メディアの過渡期にこの世に産み落とされた時代の生き証人。

 

聴覚と視覚をつなぐ

こちらはギターデュオGONTITIのアルバムジャケット。

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この作品以外にも竹中直人や小泉今日子、東京スカパラダイスオーケストラというそうそうたるミュージシャンのアルバムジャケットデザインを出がけているミックさん。聴覚でキャッチする世界観を目に見える形で作品に変換するアーティストの手つきを目の当たりにできる。

 

鏡のアートが開く世界

鏡を芸術的作品の要素として用いる例をあまり知らない。がゆえにとても新鮮な作品。

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作家自身の言葉を引いておく。

人は鏡に映る姿を見て、自分の顔かたち、存在を認識します。身だしなみや、自分の語りかけ、気持ちを整えたりといった大切なアイテムです。

ミックさんが言うように人は鏡がなければ自分の姿を認識することができない。世の事物に新しい発見することが芸術の始まりなのだとしたら、自分に対して新しい発見を促す鏡もまた、芸術のきっかけになるのかも。

 

こちらは展示室の隅に、展示されるともなくひっそりと顔をのぞかせていた作品「みずたまり」 

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考えてみれば、雨上がりの「みずたまり」はすべて鏡であり、世界を映し出すもの。それに気づかせてくれるだけで、このアートを見る意味があったというもの。

 

茨城の風土と生活が作品に

茨城の伝統工芸をミックさんが総合的にプロデュースした一角もあった。

ミックさんいわく

それら(伝統工芸)の存在は間違いなくその地の自然や環境、人々の暮らしに密接な関係を持ち、無駄なく美しい。

とのこと。長く伝わっている伝統工芸は、時の審判を経るうちに余計な要素は削ぎ落とされ、シンプルな良き部分だけが残っているのだろう。

展示されているものから幾つか紹介しておきます。

 

水府提灯

水戸で作られている水府提灯。水戸藩の下級武士が生活を支えるため励んだ提灯作りが発祥といわれる。近年では海外旅行客のお土産としても注目されているとか。インテリアとしてもカッコいい。

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西ノ内和紙

常陸大宮で栽培される「那須楮」を原料にした西ノ内和紙。その和紙から作られたバッグ。和紙の風合いがバッグにはっきりとした個性を与えている。

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桂の雛人形

茨城県城里町(旧・東茨城郡桂村)で製作されている雛人形。人形の衣装の図案は薔薇をモチーフにミックさんが図案化したらしい。

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夢のようなメルヘンの世界から茨城の風土に根差した作品まで様々に楽しめる展覧会。6月24日(日)まで。

 

※美術館の公式ホームページです。

しもだて美術館