歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを書きまくろうと思っていたら、仕事柄どうしてもTVの記事が多くなる今日この頃…

本「関係人口をつくる」・感想

日本社会は成熟してきている。

関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション

関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション

 

最近、地方活性化、地方再生の界隈で「関係人口」という言葉が話題になっているそうだ。

 

本の表現を引用させていただくと…

関係人口とは、(その地域に)住んでいなくても、地域に多様に関わる人々=仲間のことです。例えば、定期的に足を運び、特産品を買ってくれる。離れていても、地域のファンであり、ともに盛り上げてくれる。

というものらしい。

総務省の研究会(=「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」)の中間とりまとめにも、注目すべきキーワードとして盛り込まれた

ということで、行政からも注目を浴びているキーワードのようだ。

 

もう少し噛み砕いて説明してみる。

 

地方を活性化させるには、確かに人口が増えた方が良いだろう。そこで、ある地域が自分の地域への移住促進の施策を打ったとする。でも移住というのは、当然のことだが、どの人にとってもハードルが高い職を変えなければいけなかったり、家を売らないといけなかったり、子どもが転校しないといけなかったりと、人の生活が激変する。ゆえにそう簡単に移住者が増えるものでもない。

 

では方針を変えて「やはり、地方活性には観光だ!旅行者を増やせ!」ということで、その地域を旅行してくれる人を増やすため施策をあれこれ打つとする。しかし、旅行というのは、ある地域に関わるとしても、その旅の期間だけのもので、旅が終わってしまえば、大半の人はその場所のことは、忘れてしまうだろう。また観光者向けのイベントを地域が開催した場合、地域の持ち出しやコストがかさんで、地域の側が疲弊してしまうこともあるのだそうだ。

 

そこで、地域外の人の、「移住でもない、観光でもない”第三の”関わり方」が今、求められているらしいのだ”観光以上、移住未満”のレベルで、地域の問題に自分ゴトとして関わってもらうあり方。本の中の具体例としては、3ヶ月間プチ移住してみたり、地方でイベントを開催してみたり、東京に住みながら地方の企業と仕事をしたりする生き方。そのような生き方をする人のことを「関係人口」という。

 

この本では、島根県がその「関係人口」を増やすために、東京で主催している「しまとこアカデミー」という取り組みを通して、地域にとっての関係人口を増やし、地域を元気にするのはどうすればよいか、考察が深められている。

 

自分はこの本を読んでみて、「関係人口」という概念から日本社会の変化、成熟を感じた。

 

まずは所属意識の変化。従来ならば、人はある地域に”住んで”その地域のことを何よりも最優先しないと、その地域について発言したり、行動したりすることは良しとされなかったと思う。しかし今は、自分の興味関心にしたがって、様々な地域と様々な関わり方をしても許される。というか、”関係人口”的に言えば歓迎される。

 

このことは、会社への終身雇用的な所属意識が失われつつあることととも、きっと連動している所属している会社(組織)にがんじがらめにされるのではなく、自分が提供できる価値を必要としてくれる組織と、滑らかに関わっていく働き方をする人が増えているが、地域との関わり方もきっとそうなっていくのだろう。地域への所属にしても会社への所属にしても、どんどん軽やかでスマートになってきている。

 

もう一つ感じた日本社会の変化。それは今の人が欲しているのは、モノの所有ではなく”人との関係そのもの”であるということ。自分の興味関心が持てて、かつ自分が能力を発揮できる地域で、その地域の人と関わって生きることに最上の価値があると考える人が増えてきているのだ。その「人との関係性へのニーズ」をフックにした地方活性化をうまく進めている地域が出現し始めていて、その一つがこの本でも取り上げられている島根県である。

 

そう考えてくると、従来の「インフラ型=お金落とし型」の地方活性化を遂行できる人材よりも、人のマインドの変化に対応し、人が求めている関係性へのニーズを繊細に満たすことのできる”人間通”の人材が、地方活性化の現場では求められている、ということになる。

 

「人が関係性を欲望している」というのは何も地方活性化の分野だけではなくて、最近では、小売とか飲食など、消費者と直接ビジネスしている分野でも見られる兆候。だからこそコミニュティマーケティングなどどいうことが今、盛んにうたわれ、コミニュティを通じてモノを売れ!などと言われる。人はモノそのものよりも、モノを通じてどんなコミニュティに属し、どんな関係性を享受できるかというということに関心があるのだ。このことはライブ配信サービスSHOWROOMを仕掛けている前田裕二さんが、「自分の事業モデルは”スナック”だ」と言ってることにも通じる。スナックがウリにしているのは、酒やツマミそのものではなく、ママを中心に形成されるコミニュティそのものだから。

 

以上のような日本社会の変化の具体例を感じられるこの本。地方活性化に携わっている人はもちろん、多くの人を巻き込んで、ビジネス、NPO等何かの活動を展開したい人に広くおススメです。

 

 ※こちらは地方活性化の真実について説くマンガ。良書です。

www.rekishitantei.com