歴史探偵

趣味の歴史、地理ネタを書きまくろうと思っていたら、仕事柄どうしてもTVの記事が多くなる今日この頃…

ブラタモリ宝塚・感想〜タモリさん、良い仕事してますね〜

今回はタモリさんのひと言が視聴者の気持ちを上手くリードしていた。

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ブラタモリ宝塚を鑑賞。テーマは「ナゼ宝塚は娯楽の殿堂になった?」

宝塚ということで阪急の小林一三(こばやし・いちぞう。電車を敷くと同時に沿線の観光・住宅・商業開発までを一体となって構想&実現し、日本の私鉄経営のモデルを作った大実業家)はいつ出てくるんだろう、と多少の先入観を持ちつつ、見始める。

 

冒頭で宝塚と大阪・神戸の位置関係を航空写真を使ってきっちり押さえてくれたのは良かった。さすが、タモリさん、「宝塚は神戸・大阪と等距離ですね」との指摘。この発言は何かの伏線なのか(最終的には別に伏線ではなかったが)。

 

大劇場をブラブラと見て回る。特段、何を見て回るのか、という強い目的意識は設定されていないが、これは豪華な施設だからとりあえず一回り見ておこう、という意図か。

 

大劇場シーンの最後まで来たところで、識者が「地形を見ていくと宝塚が娯楽の殿堂になった手がかりを知ることができる」と発言。それに対して、「娯楽の殿堂、地形と関係あるんですかね?」というタモリさんの発言がいい。まさに自分もそう思った。

 

視聴者の気持ちに寄り添う出演者のこういう発言はとても大事。視聴者の”置いてきぼり感”がなくなる。このタモリさんの発言は台本通りなのだろうか。だとしたら構成がきっちり計算されていると思う。

 

続いて、高い建物に登って宝塚の地形の確認。そこから見えるちょっとこんもり盛り上がってる丘が次の目的地として設定される。ただ広く風景が見える、というだけのこのような何でもない建物にタモリさんのようなビッグタレントがやって来て、本当にふつうの風景を、ああだこうだ読み解いていく…。こういうシーンがブラタモリらしくていい。

 

「小浜(こはま)」という地区を訪れる。「大堀川」という”堀”の字が含まれた川の名前にタモリさんが着目するところから、この辺りに人工の河川があった、との展開が自然。現場の発見感はいつも大事にしたいところ。その後、歩きながらクランク発見→城的な防御施設があった→戦国期に、浄土真宗の寺(毫摂寺)を中心とする寺内町(じないまち)があったと進行してゆく。歩きながら街をひもとく王道の展開。それにしても宝塚に寺内町が宝塚にあったとは知らなかった。純粋な驚き。

 

そしてここでもタモリさんの「(寺内町は)興味深いんですが、エンターテインメントと関係してくるんですかね?」発言。そうそう、自分もそう思うよ、と全く同意。タモリさん、僕らの気持ちを代弁してくれてるなあ。良い仕事してる。

 

江戸期に入り、この寺内町は宿場町に転換し、「有馬街道」「京伏見街道」「西宮街道」の出合う交通の要衝として発展したという。ここに酒蔵、旅籠、芝居小屋やなどの施設が存在したことが、宝塚が娯楽の街になったことの原点なのだと結論づけ、この小浜パートを締めくくっていた。

 

でもここには若干の違和感を感じる。のちに出てくるが、やはり宝塚に温泉が出たことが、現在のような娯楽の街として発展していく基礎を成したのではないだろうか。小浜地区と今の宝塚に連続性はないのだが、番組のテーマが「ナゼ宝塚は娯楽の殿堂になった?」であったため、いわば番組の都合で強引に、近代の宝塚の前身と位置づけたのではないか(あくまで推測ですが)。仮に前近代の宝塚(の小浜)と近代以降の宝塚に連続性があるのなら、それをきちんと資料や識者の話で示してほしかった。

 

テレビ番組はどうしてもテーマに縛られる。今のテレビの”しんどさ”はここにもある(テレビの”しんどさ”については以前、ブログにも書きました)。

candyken.hatenablog.com

 今回の場合だったら「ここまで見て来ましたけど、小浜地区と現在の宝塚ってあんまり関係ないんですよね」「え、そうなんですか!」とあっさり認めてしまう展開でも良かった気が。

 

それはさておき、番組上は時代が明治に移り、温泉が見つかった(明治17)話へ。ここではいかにも関西弁バリバリといった魅力的な洗い張り屋(=いったん着物を分解して、洗い、のりをつけてもう一度形をととのえるお仕事)のおじさんが登場。このおじさんがさらに、かつて花街だったこの辺りで、名妓と言われていた女性を電話で呼び出し、タモリさんと記念写真の撮影。このシーンは、いわゆるブラタモリ探索的なものではなかったけど、「鶴瓶の家族に乾杯」的な展開で非常に面白かった(タモリさん自身も言及していたが)。あの一連のシーンはアドリブだったのだろうか。もし台本をあのように自然に展開していたのなら、制作陣やるなあ!という感じ。

 

ここでまたタモリさんが「(こういった花街も)宝塚大劇場にはちょっと結びつかないですね」のコメント。納得のひと言。番組は冒頭のテーマに対してどういうオチをつけるのか、とこれからの展開が気になってしまう。

 

次のシーンでようやく宝塚大劇場が登場。小林一三も登場。小林が武庫川左岸の低湿地を埋め立てて、劇場を作ったという話。しかし話だけで終始し、低湿地に行って実地に検分したりはしないので、とちょっとがっかり。橋の上の識者の話で全て説明してしまうので、講義を聞いているみたいになってしまう。移動の時間がなかったのだろうか。

 

大劇場を再び訪れ、「宝塚新温泉」のプレートの前。ここでも今の宝塚歌劇団へつながる話が長く展開。識者の話と写真、資料映像で全てが進行するからイマイチだった。タモリさんが動いて場面がずんずん変わっていく中で事実が発見されて、ある結論が導かれる、というのを期待しているんだけれど。タモリさんが動いている画面というのは、それだけで躍動感があって、視聴者を惹きつけるエネルギーを持っている。登場人物が動かない画面というのは、散歩番組では長く持たないと思う。

 

最後は「花のみち」武庫川の自然堤防だったという話。これも草彅さんのナレーションで先に”地形の話”って言ってしまうから、ちょっと興味が半減した。歩きながら謎解きはしないのか…と。自分はテレビ的には古い世代なのかな。今の視聴者はそんなまどろっこしい展開は待ってられないのかもしれない。

 

でも今回はタモリさんの発言をうまくシーンの展開に活かせていたし、鶴瓶の家族に乾杯的展開も新鮮だった。今度宝塚に行ったら、ミュージカルは見なくてもいいので「花のみち」は歩いてみよう。